宝塚歌劇団の傑作「ノバ・ボサノバ」について

今日、東京宝塚劇場に、あの「ノバ・ボサノバ」を見てきました。

この宝塚の傑作ショー 「ノバ・ボサノバ」は1971年の5月に
夭折の天才演出家 鴨川清作氏の手により作り出されたもので
初演時の主演は これまた 宝塚史上でも最長に近い 13年間もトップスターであり続けた
伝説のスター 真帆志ぶき でした。

ショーとは言っても この作品には 大きなストーリーがあります。
カーニバルを間近に控えたリオに生きる 義賊と盗賊と令嬢の三角関係物語を軸に
作品は進行します。

冒頭 モザイクタイルで描かれた青い波のモチーフが描かれた 全場幕が上がると
そこはもう イパネマ海岸です。

なだらかなスロープになった海岸を 男女が
数人ずつ シルエットでかけていく 印象的なプロローグです。

そこから 一転して 原色があふれるカーニバルの雰囲気が あふれ出す素晴らしい舞台でした。

色んなところが印象的だったので 箇条書きにします。

●音楽 
非常に感銘を受けました。
1971年といえば 当然1966年にセルジオ・メンデスが
全世界にボサノバを広めてから5年経っているので、当然最先端の音楽として
世界を席巻中でした。

菊田一夫先生の下で数々のオリジナルミュージカルを作ってきた、当時でもすでに大御所だった
入江薫氏、後にベルサイユのばらで大ヒットを飛ばす 寺田瀧雄氏、父 岡田敬二のロマンチック・レビュー
全てのチーフとしてもおなじみ 吉崎憲治氏の 作曲家チームは それぞれ伝統的な宝塚の
音楽方法に縛られる事無く 素晴らしいスコアーを作り上げました。

途中まで本当にほぼノンストップで音楽と踊りが進行する素晴らしい構成です。

殺人事件が起きるところなどは ブーガールーだったりするんです。
これは作曲チームや 鴨川先生が参考のために聞き込んだレコードが
MGMミュージカルなどで使われる 「ブラジル」「キャリオカ」のような
古いスタイルのラテンミュージックではなく
マルコス・ヴァーリなどの新しいブラジル人のボサノバだったり、ニューヨークで当時サンバが
咀嚼された上で出来上がったジャンル ブーガールーなどの 最先端の音楽だったということを
非常に強く感じさせます。

宝塚のショーは元々は非常にメロディ先行型の音楽設計をされていますが、
鴨川先生は、70分のショー全体をビートから構成しているような印象を受けました。

特に 24小節ぐらいの短いサンバのシーン 第9場Bは 非常に印象深いシーンでした。


●振り付け
振り付けは メインに「宝塚の燕尾服を最も美しく見せてきた」喜多弘氏
それに 日劇メインで活躍していた 県洋二氏
朱里みさを氏
さらに、当時アメリカから帰ってきたばかりで、その後の宝塚と日本ミュージカル界に巨大な
足跡を残す事になる 「鬼のタカちゃん先生」こと司このみ氏の4人が担当しています。

私はこの作品の中で 3箇所素晴らしいと思ったシーンがありました

★1 第11場から第13場の 殺人事件が起きるところ
★2 第22場AからCの カルナバルのシーン
★3 第24場AとBの 伝説的なラストシーン

★1 はブーガールーの早くて都会的なビートに合わせて 二人の若者と令嬢が
タナトスの香りのする踊りを踊り、やがて 悲劇が起きてしまいます。
男を刺してしまって 苦しむ主人公を押し流すように、ダンサー達が濁流のように
通り過ぎるシーンの 美しさには 気おされました。
振り付けは 県洋二氏  音楽は寺田先生です


★2 はカルナバルの高揚感を 端正な男役の踊りから 一転して
ぐいぐいと盛り上げる 素晴らしいシーンです。
振り付けは 喜多弘氏 音楽は吉崎先生です


★3は 全てが終わった海岸で 男の子が挙げた 鳥の凧を見たソールが
人生の息吹を思い出すという 素晴らしい 本当に素晴らしいシーンです
衣装 音楽 すべてが素晴らしく計算された上で
今まで見たことも無い 情熱的な踊りが繰り広げられます
振り付けは 天才 司このみ氏 本当にタカちゃん先生らしい、狂気をはらんだ
踊り狂う素晴らしいシーンでした

特に最後 鳥が羽ばたき
最後 金の空になるところの 異常な高揚感は 天才鴨川清作の真骨頂とも言えるでしょう。

音楽は中井光晴氏

いやぁ このシーンは本当に凄いです。


●美術
このショーの美術も大変素晴らしいです。
衣装と装置を同じ 静間潮太郎氏という 宝塚を長年手がけてきた方がデザインされているのですが
とにかく リオの熱と日差しを モザイクタイルで表現しているんです
コレがまず凄い 
それに 海岸のシーンが多いので 舞台上に 素晴らしい波型のマスキングを施して
色々な風景を見せてくれます

さらに最後は多分インカ帝国がモチーフの 金色の衣装と金色の空を作り出し
全ての熱を ショーの最後に永遠に閉じ込める事に成功しています


●演出
とにかく素晴らしいの一言です。
視覚上の 青と金  白と原色 
夜と金色の空 

音声設計上の 激しいビートと 無音 波の音

芝居の 聖者と邪なるもの

その対比のつけ方が抜群です。本当に凄いです

しかも トップスターを屑ひろいにして「え~屑やおはらい・・・」ってやらせたりするのなんて
今では考えられないし、真帆志ぶきさんだから成立したわけですよ。

前半戦は菊田節のコミカルな芝居を交えて 人物の背景を 説明的な台詞無しで明示し
後半戦はとにかく 全ての感情を ビートと踊りに閉じ込めるという
素晴らしい 演出をしています。

いやぁ、ホント ちょっと恐ろしいぐらいの出来でした。


で、パンフレットを見ると
真帆志ぶき 鳳蘭 郷ちぐさ 安奈淳などの
伝説的な大スター達が とんでもない目力で演じているのが分かります。

柚希礼音さんもとても頑張っていますが、是非70年代に見たかったです。


しかしホント、今 こういうショーを作る事は不可能に近いです
でも 頑張ってほしいですよ。稲葉さん、原田さん、児玉さん 
あなた方にかかってますよ!


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ちなみに 某動画サイトで
安奈淳さん版のエンディングを見ました。
すげぇ。凄いです。 鴨川先生が演出されたバージョンですからね。

本当は貼りたくて仕方ないですけど
コレはさすがに 皆さんの共有財産です。
ご自分で検索してください。

安奈淳さんについては 日を改めて 書きたいと思います。
彼女の素晴らしさは なんとなく過小評価されているような感じがするんですよネェ・・・。
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by AWAchampion | 2011-06-12 15:52 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)