「志村魂」を見て、志村さんとウッディ・アレンを考える

今日、志村けんさんがやっておられるお芝居「志村魂」(しむらこん)を見ました。
会場の天王洲銀河劇場は、小学生のお子さんを連れたファミリーで一杯!
たぶん客席の3分の1はお子さん、3分の1は演劇好きの私みたいな客層、そして3分の1が
家族やカップルという素晴らしい配分!
しかも、何ていうんでしょう・・・。宝塚とか帝劇にもお子さんがいるんですけど
そういう「バレエ習ってます」みたいな客層じゃないんですよ。ご両親も演劇見るのが初めて・・・みたいな
感じの客層でした。

劇場に行ってみると 
前半 1時間35分 休憩 20分 後半 1時間20分 の3時間を超える長丁場!
お子さん大丈夫か?という挑戦的な長さです!

前半戦は バカ殿から始まって、ひとみ婆さんやら、往年の「だいじょうぶだぁ」で見た
ショートコントなど、とにかくコント祭り!
ダチョウ倶楽部・くわまん・磯山さやか・みひろなど おなじみのメンツが
大暴れします!

そのほとんどが「うんこちんちん」的なネタで、場内の小学生が「志村後ろ後ろ!」で
大騒ぎです!
さらに その「だいじょうぶだぁ」に出ていて、一時期公私ともに志村けんのパートナーであった
いしのようこが出てきて、当時の「いちゃいちゃネタ」をやったりするものだから
私たち世代も懐かしくて 一緒に大笑い。

なんだか「8時だよ!全員集合!」の会場ってこんな感じだったんだろうなぁ・・・。という
懐かしい雰囲気に包まれます。

しかしそんなショートコントの合間に 「STOMP」式のストリートタップや、「シルクドソレイユ」的な
エアリアルの技が挟み込まれ、ただノスタルジーだけじゃない喜劇空間がノンストップで紡ぎだされます。

子供たちの笑い声が絶えないなか、1時間半はあっという間に過ぎました。

後半はガラッと変わります。

まず三味線を構えた志村さんが上妻宏光直伝の三味線を3曲 弾きます。
途中 よさこいソーランっぽい踊りを交えたり、ギターとのコラボを見せ
きわめてかっこ良く三味線を弾くのですが、最後にお尻を見せて 笑いを取るのも忘れません。

その後、松竹新喜劇のネタ「先ず健康」が上演されました。
これは藤山寛美さんがやられていたネタで、親孝行の兄弟が 父に対して正反対の
形で親孝行をするが、両極端すぎて父は翻弄されるというお話で、
SETのベテラン俳優 野添義弘さんと、ダチョウ倶楽部の上島竜平さんが兄弟
志村さんが父という役で、時にアドリブを交えながらの人情話が展開されます。

最後はほろっと泣ける、今時珍しい ドストレートな喜劇を 芸達者の3人が
演じました。

これで終わりか?と思ったら最後に 「変なおじさん」のショートコントがあって大団円!
おなか一杯の3時間が終了しました。



いやぁ・・・。志村さんは凄いですね。
大スターですよ。ご本人は全員集合の時よりも肩の力を抜いて、旧作コントを演じてらっしゃるのですが
とにかく会場を埋めた上は60歳~下は4歳ぐらいまでの幅広い層は、すでに彼のコントとともに
生きてきているわけですよ。
だから 何が出てきても「待ってました!」状態。
彼が紡いできた喜劇人生の重みを感じました。
それに、彼は客席の空気をコントロールする天才です。志村さんが話しているときは
全く飽きることがありません。それを 客席で体感できて素晴らしい経験をしました。

それから、特にいしのようこの存在は 凄く面白かったです。

ちょっと 思ったんですが 志村けんと いしのようこの関係は 
ウッディ・アレンとダイアン・キートンの関係性に似ている気がしました。

ウッディ・アレンは40本近い映画を作っているのですが、
今まで二人の 公私ともに深い関係になった女性、ダイアン・キートンとミア・ファローが
彼に大きな影響を与えました。

ミア・ファローは「カイロの紫のバラ」「ラジオデイズ」「カメレオンマン」など
ウッディ・アレンが 完全に作り上げた世界の中で キャラを憑依させて演じてきた女優さんです。

しかしダイアン・キートンと組んだ作品は 「アニー・ホール」「インテリア」「マンハッタン」と
どれも ダイアン・キートンはきわめて本人に近いキャラクターで出演し
ウッディ・アレンも 非常に本人に近いキャラで向き合います。

志村けんも基本的には、キャラを憑依させる形の芸人さんです。
現在のコント上のパートナー優香は、非常にデフォルメしたキャラを演じることが多いです。

しかし志村さんがいしのさんと長い同棲生活をしていた、あの90年代初頭
志村&いしのコンビのコントは 非常に本人に近い 恋人同士の虚とも実とも分からぬ
危うい関係性のもとに立っていたのは、当時の生きた日本人のだれもが知っている事でしょう。

ウッディ・アレンがダイアン・キートンと付き合って、自伝的な作品を作っていたのも
志村けんが、いしのようこと きわめて私的なコントを作っていたのも
同じ 40代初頭です。

コントという 他人を生きる世界を書いていた作家が
40代になって、才能ある若い女性と出会い、自分を掘り返してみたくなるのは
今 その世代に私も立ってみて なんだかわかる気がします。

で、志村さんといしのさんは 18年ぶりの共演だそうです。
志村さんにとって 青春のパートナーであったいしのさんとの共演はちょっと恥ずかしそうで、
逆にいしのさんは 志村さんに対して余裕があるというのが、とても微笑ましく思えました。 

志村さん一座の大衆演劇という趣ですから
意図して それほど目新しいことをやらないというお芝居かもしれません。

しかしよくよく目を凝らすと これがタイトル通り 志村けんという稀代の喜劇作家&役者の
本質がよく表れたお芝居ともいえるのでは?と思いました。


あと、絶対忘れちゃいけないことですが、
ダチョウ倶楽部は テレビでは「汚れ芸人」「リアクション芸人」と言われていますが
もともとは テアトル・エコー出身の実力派です。
特に上島竜平さんの 深みのある演技力には 今更ながらびっくりしました。

いかにテレビが芸を一面的にしか取り上げないか?
ということも良くわかりました。
テレビの王であった 志村さんが 60になってたどり着いたのがお芝居だというのが
なんだか色々考えさせられますね。
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by AWAchampion | 2012-06-07 23:19 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)