「風立ちぬ」を見ました

さて、現在大変話題になっている スタジオジブリ最新作
『風立ちぬ』を見に行きました。
まだ公開4日目ですから、ネタバレを含むこのコラム
どうぞご覧になってから覗いてください。











ということで、ご覧になった方だけ残りましたか?
では・・・。
ストーリーは 第二次世界大戦中 世界一の戦闘機と言われた
三菱ゼロ式艦上戦闘機  いわゆる ゼロ戦を設計した 三菱飛行機の
実在の技師 堀越二郎さんの半生をモデルに、
そこに「風立ちぬ」などを書いた堀辰雄の「菜津子へ」などのラブストーリーを
織り交ぜて描いた作品です。

物語は二郎の心の中で ジャンニ・カプローニというイタリアの飛行機黎明期の
名設計技師との対話を縦軸に 進行していきます。

パンフレットを見ると 演じた野村萬斎さんは「メフィストフェレスだ」と宮崎さん
から言われたそうですが確かに良いことばかり言うわけではない 
案内人という事で言うと そういう感じでしたね。

見た率直な感想ですが
この映画は見る人を相当選ぶと思います。というのは最近の映画では
かなり丁寧に語られる 時間・場所の移動 などが 結構
「当然会話でわかるもの」として バッサリ飛ばされるからです。

つまり例えば 本郷という地名が出れば この人は東大出身
上野広小路と本郷はそれほど 離れていないから歩いて行ける
東京と名古屋は戦前 特急つばめで大体 5時間ぐらいかかる
などなど 知ってると知らないじゃ大違いなのです。

ただ、まあもともと日本映画ってそんなものでした。
特に小津さんとか成瀬巳喜男さんとかの映画って 極自然な形で
そういう事を会話に入れることで 処理していましたよね?
省略の技法がきわめて 古典的で上品な日本映画らしい作品でした。

ラブストーリーが始まり、やがて九式単座戦闘機を設計していく
後半30分は本当に胸躍りました。かなりいい映画だったと
思います。
あのモネっぽい「パラソルをさした女」こと 菜穂子さんは
良いキャラクターですね。彼女が出てきてから 二郎に人間味が
ぱっと広がるところは 抑揚が効いている分 非常に感情移入できて
そこから二郎がいとおしく思えました。
庵野監督を起用して 押えすぎる演出をしたのがそこで生きていたのは
さすがです・・・。

また、大正末期 震災の復興から第二次大戦突入直前の
大日本帝国のもっともよかった時代の東京をジブリが描き出して
くれたのはとても良かったです。

あの姿がどこまでちゃんと時代考証が入っているのか?は
分かりませんが、見る限り 昭和初期の帝都東京は 確実に昭和30年代の
東京より進んでましたね。

ただ、ジブリで育った 20代とかの人がどこまでわかるか?は
相当疑問です。

そもそもゼロ戦がどの程度革命的だったのか?とか
そういうのは もうわかってる物だと思って話が進行しますからね。

まあゼロ戦じたい ほとんど語られず、堀越二郎さんご自身が好きだった
九式単座戦闘機の事ばかり語られますけどね・・・。

要するに当時のプロペラ戦闘機で、非力な三菱エンジンでありながら
とんでもない俊敏な動きをした戦闘機だったわけです。
ただその代償として ほとんど防弾を考えなかった という飛行機だったのです。

それを知っていると、なぜそういう飛行機を作ったのか?が
分かってくるのです。
確かにちゃんと あのすばらしい レクリエーションのシーンで
二郎自身が語ってはいますが、(ゼロ戦ではないですけど)
その辺の知識が全くないと そもそもよくわからないんじゃ
無いでしょうか?

堀越さんが映画の中で寝ずにつくるのが
「ゼロ戦ではない」というところも セリフでもまるで語られず
後になって エンディングで「ああ、あれのあとゼロ戦作ったのね」と
分かるという かなり思い切った省略技法を使っています。

まあ飛行機の形自体が全然違うんですけど、知らない人は知らないですよねぇ。

ジブリのアニメーションは本当によく出来ています。
出来ているんだけど、実写作品と比べて 一枚の絵のなかにある情報量を
監督が絶対的にコントロールできる分、夢とのカットバックで
質感というか 夢と現実があまり変わらないように見えて 色々
混乱しがちでは?と思いました。
アニメーションはもう少し丁寧に説明すべきメディアなんじゃないかな?と
思います。

賛否両論あるエヴァンゲリオン 庵野監督の主人公起用ですが
周りをうまい人で固めたうえで 一人朴訥とした人を入れるというのは
小津さんにおける笠智衆さんという事なんでしょう。
その狙いは 割とあたっていたと思います。後半ラブストーリーのところでは
ちゃんと 庵野さんも芝居してましたしね。

ただ、ラストがねぇ・・・。
要するに黄泉の国で
メフィストフェレスが「どうだった?」と聞くと
二郎は、「自分が良かれと思って2万機も作った 世界最高の飛行機
ゼロ戦は 結局生きて1機も日本に残らなかった 多くの若者にとって
棺桶になってしまった」と嘆くわけです。

そこで死んだ妻 菜穂子を見て
「死んだ若者は それぞれその瞬間 自分を生きたわけだから
設計者のお前がすべてをしょい込むことはない」
「生きよう」

というメッセージが込められて終わるっていう事なんですけど

一回フワッと見ただけじゃよくわかりません。

これには理由があります
九式単座戦闘機の飛行実験のシーンで
その直前に菜穂子が別れを告げていくシーンが入っていて
しかもそれを気が付いていることを暗示させる 二郎の憂い顔が
入っているので、ラストが落ちていないのです。

あそこは満面の笑みで空への喜びを表現して良かったんじゃないかなぁ?
と思いました。

結構ジブリの作品って ラスト「考えオチ」というか 落ち切らない作品が
多く、あの「カリオストロの城」の超名エンディングを考えた
人と同じとは思えないところがありますが、
今回もきわめてフワッと終わります。
その内容について 色々言いたい人もいるようですが 
私は内容については別にどうとも思いません。ただ
エンディングの強度はもう少し強くてもよかったんじゃないか?と
思いました。

それは実は アニメーションとしての宿命もあります
もっと最後の黄泉の国を地獄っぽく描くべきなんです。
だって戦争の地獄なんですから。
火が燃えても なんか美しく見えちゃいけないと
思います。多くの飛行機の残骸を歩いて行きますけど あそこももっと
別の質感で生々しくないと辛いんじゃないかな?と思いました。
でもジブリアニメーションにしちゃうと 美しくなっちゃう・・・。
そこはつらいところですね。

ユーミンのデビュー作「ひこうき雲」は、これ以上ないベストマッチです。
あれも含めて映画だという事であれば、素晴らしいエンディングなのですが、
今をさかのぼる事40年前に作られたJ-POPの古典があれほどエンディングに強く
響くってことは 要するに映画のオチが決まっていないから そこに
全て流れ込んじゃうってことなんじゃないかな?と思いました。
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by AWAchampion | 2013-07-24 09:42 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)