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「ノルウェイの森」を18年ぶりに読みました。

先日、ふと気になって、「ノルウェイの森」の文庫本を
手に取りました。

僕がはじめてこの本を読んだのは、多分1991年。
僕が20歳の頃でした。
1987年に出版された
ハードカバーの「ノルウェイの森」は当時、若者なら
だれもがファッションアイテムの一つとして、あの
緑や赤一色の表紙を小脇に抱えていたものです。

登場人物の『僕』と同じ20歳でしたが、
今から思えば当時の私は、『僕(ワタナベくん)』が
聞くようなレコードや、彼が読むような本をしっかりと
思い浮かべられるような20歳ではありませんでした。

それに彼が都会で抱いた「だれとも繋がりがない」という
喪失感に共感するには、町はバブルでアッパーな気分過ぎたのです。

で、作品冒頭 37歳の『僕』が国際線の機内で流れてきた
「ノルウェイの森」を聞いて、20歳の頃 出会って別れた
親友の恋人の事を思い出すという作品を、
38歳になってもう一回 読み直してみたわけです。


やはり、大人になって読んだ方がこの手の作品は、
自分がそういう体験をしてきているがゆえによく分かりますね。
この作品で繰り返し語られる「老成した精神と若いままの肉体」の
乖離などは、本当に「ああ、そういう時期ってあるなぁ。」と
感慨深く読みました。

僕は20歳ぐらいの時に、この主人公と同じようによく手紙を書いて
いました。そして手紙はタイムラグがあるゆえに、すれ違い
「会う会わない」でよくケンカもしたし、バカみたいに長い時間
待ったり、待たせたりしたこともありました。

そういう青いラブストーリーとして読むと、非常にむずがゆいけれど
共感できる物語ですね。大学時代の親友との遊びやら、学食での会話なども、非常にリアルに響きました。

ただ、大人になって読むと、「直子」がなくなった後の描写は
いささか性急過ぎるかとも思いました。急に北陸を寝袋一つ抱えて
放浪したり、「直子」と自分の橋渡しになっていた中年女性と
同衾してしまったりという辺りは、どうもそれまでの、
青春の喪失感と都市の孤独を感じていた主人公にしては
マッチョすぎる気がしました。
もっと、文字通り、人間関係は夏の海の砂の城のようにフェイドアウトしていくから、都会は孤独なんだと思いますしね。
そして、フェイドアウトしていくのを許容してしまう、自分に
ぞっとしたりするものです。その辺はちょっと、やはりバブル期の
小説の匂いがしました。

とはいえ久々に読めてとても満足したし、
「ああ、大人になっちゃったんだなぁ。」と痛切に思いましたね。
by AWAchampion | 2009-09-01 00:04 | 懐かしいもの | Comments(0)