2017年 06月 17日
最近見た映画 その1『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
総合演出の 津田さんから 色々と「最近見て面白かった映画」について色々と聞く機会がありました
普段はあまりそういう話はしなかったのですが、お付き合いも長くなったせいか
仕事以外の話もするようになりました
で、私は古い映画の方が遙かに見ていて、好みもそっちなのですが
最近の映画のおすすめをたくさん聞いたので 彼のおすすめに従って見てみることにしました
で、まず見たのが「マンチェスター・バイ・ザ・シー」です
これはニューヨーク大学出身の映画監督 ケネス・ロナーガンが台本を書き 演出した
作品で、もともとはマット・デイモンの初監督作品になるはずだった台本なんだそうです
もう殆ど封切り上映は終わりますのでネタバレも含みます
このマンチェスターは イギリス第二の都市の方ではなく
アメリカ・マサチューセッツ州にある ボストンの北
100キロ程度の所にある小さな都市
マンチェスター・バイ・ザ・シーの事です
この土地で育ったリーは 兄と兄の子供と濃厚な思い出がありましたが
いまはボストンで一人暮らし。公団住宅住み込みの便利屋として生計を立てています
ある日 兄が急死したという報をうけ マンチェスターに帰ります
そこで数年ぶりに 甥のパトリックと会います
パトリックは16歳の高校一年生 二人の彼女とバンドとアイスホッケーに明け暮れて
青春を謳歌していますが、親を亡くし後見人が必要となります
そこでリーは兄の遺言で 自分が後見人にされていることを知ります
そこで数年ぶりにマンチェスターで住み始める リー
しかしリーには 妻と娘を失った ある事件の記憶があり
それがフラッシュバックしていきます
大人になりつつあるパトリックとの葛藤、リーの土地への思いが重なって
物語は ある結末へと走り出していくのです・・・
いやはや 良い映画でした
やはり この監督さんが ニューヨーク大学で映画を学んだという感じが随所に出ていましたが
特に 音の使い方に濃厚に出ていました
映画に付けられる音というのはマイクで撮るわけですが、吐息だけを強調させたり
遠くの車の音だけを乗せたりする事が出来ます
その 耳に聞こえるノイズを心象風景とうまく合わせて 画面上は淡々と進む物語が
とても上品なレベルで動かされているのが分かります
この映画を見て
もちろんニューヨーク派の巨匠 ジョン・カサベテスもそうですし
そもそも マット・デイモンが脚本を書いた「グッド・ウィルハンティング」なども
思い出しましたが
私は この画面の端正さと物語の淡々さから
日本の 市川準監督を思い出しました
彼の「BUSU」とか「TSUGUMI」を見たときの感覚
つまり、ある関係性の中で巻き起る 小さくて見えないほどの感情の揺れを
音とフレーミングで表現する感じが そう思い起こさせたのかも知れません
ちなみの「スゴ~イデスネ視察団」総合演出の津田さんは
「倉本聰の脚本で小津安二郎が撮ったみたい」と言っていて まあそれも
言い得て妙だなと思いました
小津さんも端正なローアングルばかりが注目されますが
実は研究が進んでいるように 向かい合う二人の真ん中にカメラを乗せることで
1対1の関係性の中で わずかにゆれる感情の揺れをとらえようとした監督ですからね
by AWAchampion
| 2017-06-17 00:26
| 映画・演劇など
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