2018年 02月 25日
葉室麟さんを悼む
していたとき、私が番組に加わって初めて担当した回のゲストが
時代小説家の 葉室麟さんでした。
かれは西南学院大学を卒業後 北九州の新聞社で新聞記者として長年活躍します。
そして50才を過ぎた所で 一念発起
創作活動に入り、54才で文壇デビューを果たしました。
彼の代表作は直木賞受賞作「蜩の記」で、私が担当した回はその続編的小説
「陽炎の門」でした。
美しいお名前から想像して、実際にお会いした葉室さんは
ガッツリオジサンでしたが、色々お話を伺ってみると、とても味わいのある
エピソードがたくさん出てきました。
時代小説の作家さんは皆さん前職がある方が多いです。そしてその前職は
大きく作品に投影されます。
佐伯泰英さんは闘牛の写真で知られた売れっ子カメラマンで、その一瞬の輝きを
逃さない描写が、
上田秀人さんは歯医者さんですから、医者としての剣劇の際の身体の動きや
刀で切られた人間の描写の正確さに特徴がありますが、
もともと新聞社で地方政治をみてきて、「報われない仕事をする人」
「派閥争いで敗れる人」など、決して中央には浮かび上がってこない
敗者達をたくさんみてきた葉室さん。そんな人たちの思いを江戸時代の地方の藩士
に投影して作品を作ってきた彼は、「敗者の義」を見つめる地方紙の新聞記者らしい
目がありました。
彼の作品はどれも、本当に素晴らしいモノばかりですが
なんと2017年の年末66才の若さで亡くなられたそうです。
たった12年の創作人生でしたが
今彼の生み出した作品を集中的に読んでいます。
もちろん「蜩の記」「陽炎の門」は名作ですし
「峠しぐれ」「川あかり」などエンタメとしても楽しい作品群もあります。
是非埋もれさせたくない小説家のひとりだと思います
たった数時間ご一緒しただけの薄い縁かも知れませんが
そんなことを感じました。
故人のご冥福をお祈りいたします
by AWAchampion
| 2018-02-25 11:55
| 書籍・マンガなど
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