映画 おかあさんといっしょ はじめての大冒険

あのNHKの子ども番組「おかあさんといっしょ」がなんと映画になりました。

で、私は在野の 子ども番組の演出家の中では結構な本数を重ねているオーソリティーを
自認していますから、コレは見なきゃダメだ!と張り切って公開初日の午前中に見に行きました。
そうしたら張り切りすぎて、平日の昼間にお子さんを連れてこられるお母さんがあまりいないという
事に気がつきまして・・・
日曜日の昼間に もう一回、こんどはお子さん連れがたくさんいる状態でも見てみました。
多分 おひとりさまで この映画を3日間で2回みているのは、スタッフの方以外だと私だけでは?
と思います。

この作品は 実写パート「おかあさんといっしょ~のりもの旅」が約30分
アニメ『ガラピコぷ~ 初めての大冒険」が35分
それからインターミッションが6分など 全部合わせて大体70分強の映画でした。

この映画に関して 多分大人からのちゃんとした批評というのは中々無いと思われますので
志を同じくする私が、きちんと語ることで このジャンルの映画が日本でしっかり根付くことの
手助けになればと思い、ちょっと長めに語ってみたいと思います。

まず大前提として、この子ども番組を映画館で流す企画を立てて、それを採算に乗せるべく
がんばったNHKや日活など 製作委員会の方々に最大限の敬意を表したいと思います。
前例のない映画なので、どうなるか?分からないなかGOサインが出されたことは、後に続く
我々にとってとても大きな励みになりました。

また前提として 私が子ども番組のいろはを教わった「セサミストリート」は基本的に
対象年齢3歳~6歳の 識字教育番組であり、「おかあさんといっしょ」は乳児~3歳を対象としていて
私の番組とは若干カテゴリーが違うと言うことも述べておきます。

■キッズファーストの仕掛け
まず私が素晴らしいと思ったのは 明らかに「映画館デビュー」である乳児とお母さんに対して
最大限の配慮がなされている点です。
1)映画館ではあるが真っ暗にしない(予告編ぐらいの明るさでした)
2)そんなに爆音ではない
3)しっかりと画面から話しかける。
4)一緒に踊る場面があり、その後画面から話しかけがあって ちゃんと席に戻るように促す
5)アニメの中でも『一緒に声を出してね』という仕掛けがある
6)手裏剣が飛んでくるような構図がある
7)エンドロールで 子供がスクリーンと一緒に写真が撮れるようになっている

そして何よりビックリしたのが
8)30分実写パートが終わった後、6分間のインターミッションがある。
  (インターミッション中はフィラー映像のような景色だけが流れています)
この8)は私としては「さすがに長すぎるし要らないのでは?」とさえ思いましたが
Twitterを見ると、「インターミッションがあって助かった。」という声が多くあり
なるほどなぁ・・・とこれはさすがだなぁと感心しました。
6分も正直「長いのでは?」と思いましたが
子供がトイレに行くにはこのぐらい必要なんですね。

これらの子供への配慮は長年の経験則から導き出されたものでしょうし
他の「アンパンマン」や「しまじろう」の、乳児対象のアニメ映画にもない独自のものです。
これは素晴らしいと思いました。

■前半「のりもの旅」
うたのおにいさん  花田ゆういちろう
うたのおねえさん  小野あつこ
たいそうのおにいさん 小林よしひさ
たいそうのおねえさん 上原りさ

ゲストおにいさん 満島真之介

このブロックは基本的に 「おかいつ」いつものメンバー4人が、千葉の田園地帯でバス 
「おかあさんといっしょ」号にのって、歌いながら バス→電車→飛行機→江戸時代のかご→バスという
順番で乗り物を楽しむという内容です。

そこで私がまずビックリしたのが、「おかあさんといっしょ」がロケに出た際に
もの凄くリアルに事を進めるという点です。

「リアルな表現」

リアルと言っても二つ意味があります
一つ目は「リアルなサイズ感」です。
ダンスや歌が中心のコンテンツですが
基本的に4人の「FFサイズ」(頭から足まで全身入るサイズ)が基本で、動きをちゃんと見せる
サイズの中で進行していきます。
これは、昔のMGMミュージカルでも基本になった、ダンスを撮る際の古典的かつ基本的な
サイズです。
近年はやはりダンスシーンを細かくパーツごとに撮って素早く編集することで
視聴者をダンサーと同じ空気、同じ動きの軸の中に入れる事が流行っています。
映画『CHICAGO』などはその典型でしたが、
もちろんそうしないのは子ども番組としては正解だと思います。

ただ、私が驚いたのは、例えばバスに乗ったお兄さんたちが「あ、窓の外を見てご覧」
と言うと、流れる風景が『隣の窓越し』に映されます。
(もっと映像を派手にするなら、それこそ運転席からの見た目とかにすると思うのですが・・・)

千葉のいすみ鉄道沿いで撮影されたようで、クレーンとか
ドローンとか使いたくなる素敵な田園風景なのですが、あくまで頑なに『リアル』なサイズで
映像を構成しているのです。

私がセサミに入った時、確かに「子供にはモンタージュ理論は効かない」という事を
言われたことがあります。
映像体験が少ないので、大人なら絵の組合わせで想像出来る事も、子供には分からないので
極力物事の因果関係が分かるように撮れという事でした。
だから回想シーンとかが「セサミ」に極端に少ないのもそういうことです。

しかしそれ故にセサミの場合は「クッキーモンスターがクッキーを画面に向かって飛ばす」
「エルモが金魚鉢を覗くと顔がゆがんで 面白い顔になる」みたいな 一枚の絵の面白さを
追求せよという事が言われました。
この映画を見るとそうではなく、明らかに「子供が混乱しないように子供が実際に見るサイズで
丁寧に紡ぐ」という事が徹底されています。これはこれで経験則から出た映像の作りなのでしょう。
いわば 先に挙げたキッズファーストが映像の組み立てにも反映されているといえるのです。
映画の中でもそれを守ってきた事に、まずビックリしました。

二つ目は「表現のリアル」です。
特に『飛行機体験』のシークエンスにそれが顕著です。「飛行機に乗ろう!」と勇んで
走って行ったよしおにいさんとりさお姉さんが、向かった先は羽田空港!
そこでJALの飛行機を見て、そしてその飛行機を操縦体験するために
フライトシュミレーターで体験するというシーンが出てきます。

私だと多分、飛行機自体をパペットにして、飛行機が「僕にお乗りよ」とかしゃべって
歌い出したり、よしさんとりささんを、合成で紙飛行機の上に乗せて空に飛ばしたり・・・と
子供に魔法をかけることで、子供達に夢を見せて、話に引きずり込むことを考えがちですが、
「こどもに対してリアルに向き合う」という事が徹底されているのでしょう。
キャンディーコートをした表現にしない事に かなりビックリしました。

子ども番組を作る上で、子供のごっこ遊びなどを利用して空想の世界を広げるという
一派に私は属していますし、それが基本だと思っていましたが、私とは明らかに派閥が違います。
【極力リアルな世界で、等身大の人間を描く・・・】
【夢見がちな子供にこそ、リアルを見せる】
「おかあさんといっしょ」の中にある考え方の一端に触れた感じがしました。
これはこれで、なるほどなぁ・・・と勉強になりました。

★「踊りへの誘い」
「おかあさんといっしょ」は基本的に「一緒に踊れる曲」でつないでいく番組です。
なので、テレビの時と同様 当然のように「子供達が画面の前で一緒に踊っている」事を
前提として話が進んでいきます。

なんですけど・・・子供達にとっては初めての映画館。さらにお母さん達の中にも
「映画館では静かに見ましょう」的な刷り込みがあって、前半の実写シーンで
説明のないまま曲を歌い出して、それに
子供達が一緒に自発的に踊り出す・・・というのはちょっと無理がある感じがしました。

アニメも終わって、一番最後にキラーチューンである「ブンバ・ボ~ン」が流れて
そこで初めて「ああ よしおにいさんと一緒に いつもみたいに踊って良いんだ」と思って
子供達が踊り出していました。
それはそれは感動的なシーンで、劇場で子供達が夢中で踊っている姿は 
同じ子ども番組演出家としては 泣きそうになる光景でした。

だからこそ・・・
多分、「ブンバ・ボ~ン」がド頭でも良かったんじゃないかな?と思いました。

いや、もちろん普通のドラマツルギーで言えば、
「登場人物紹介」
「場所紹介」
「設定紹介」
「歌い出し」
で合ってるんですよ。私だってそう構成します。

でもこれはやってみないと分からない事で、子供達にインタラクティブに踊らせるなら
知ってる曲・シチュエーションを提示して とにかく踊らせた方が良かったですね。

★「満島真之介おにいさんの登場」
満島真之介さんは 18歳から6年間 学童保育の先生をされていたそうで
「おかあさんといっしょ」に出るのが夢だったそうです。
で、今回とても良い味を出していました。

のですが・・・ちょっと気になったことがありました。
彼が おにいさんたちを「いじめる」忍者として出てきて、それが実はお殿様で
おにいさんたちが『お殿様をみておびえている』シーンが出てくるので
子供達がちょっと 満島おにいさんに対して 怖がってる節がありました。
更に言うと ハイテンションでデカい声を出すので
その声のデカさにもビックリして 泣きそうになっている子供達もいました。

これはもったいない。

正直大人から見れば 満島おにいさんはメッチャ良いと思いました。
それがちゃんと子供に受け入れられるために、
それでいてスジとして面白く入れるにはどうすれば良いのか?

例えばですが 多分ゆういちろうおにいさんとかと、めっちゃくちゃ仲良くなるシーンが
必要だったんじゃないかな?とか
お殿様になった後、バカみたいな変顔とかをもっとバンバンした方が良かったのでは?
と思いました。

■後半 「ガラピコぷ~ 初めての大冒険」
普段テレビ番組の中では、着ぐるみ人形劇であるガラピコぷ~が、絵本調のアニメになって
普段と違う星を探検する話になっていました。

これに関しては上に書いたことでは無く、ちゃんとアニメらしい構図と
キャンディコートされた表現が用いられていて、むしろアンパンマンの映画などに近い表現だと
感じました。

途中で2箇所登場人物が「ねえ、劇場の君たちも 一緒に大きな声を出して!」とお願いする
所があるのですが、それが非常に効いていて ちびっ子達が大騒ぎしているのは
とても楽しかったです。

★着ぐるみ劇とアニメの地続き感
ちょっと見ていて思ったのが、通常着ぐるみ劇である「ガラピコぷ~」が
いきなりアニメキャラクターになったときに、声は同じでも、それがいつもの
ガラピコたちなんだと言うことが 分からず混乱していた子供がいたようです。

ちょっとだけでも いつもの着ぐるみを出して、
「それじゃあ 旅にしゅっぱ~つ!」とか言うと アニメにメタモルフォーゼするという
感じの演出が必要なんだろうなぁ・・・と思いました。

アニメの動きも、着ぐるみを意識して、頭の振りむき方だったり
歩き方だったがとても工夫されていて、もの凄く頑張っている事だけに
一工夫あれば もっと良かったなぁと思いました。

★対象年齢の難しさ
多分私たち大人や、5歳以上の子供達にはこのアニメはとても響いて
友情の大切さなども伝わった、キッズコンテンツとして良く出来たアニメだったと
思います。

のですが・・Twitterを見ると『アニメはうちの子には早かったかな?』的な
書き込みも散見されます。
「おかあさんといっしょ」の対象年齢である U-3 というのは
基本的に世界が「母ー子」の1:1の世界に近いと言われています。
良く幼稚園などで「ともだち」の概念を教えるのも 大体年中さん(4歳)
からじゃないですかね?
さらに社会ルール「順番守る」「静かに話を聞く」などは5歳からだと
思われます

この年代の人に 色々複雑なことを言うのは難しいです。
もちろん同じ対象年齢の「アンパンマン」は結構複雑だよと言えば、
そうかもしれませんが、あんパンがバイ菌を殴ってやっつけるという
極めて簡単な解決方法だったりします。

もう少し簡単な内容でも良かったかな?とは思いました。
これもやってみないと分からない問題なんですけどね・・・。


と言うことで、しっかり堪能させてもらいました。
スタッフの皆さんに 心から敬意と連帯の意を表したいと思います。

いつの日か私も「だい!だい!だいすけおにいさん the MOVIE」とか作りたいと思います。
やっぱりその時は、「ブンバ・ボ~ン」のように
劇場で子供達が踊りまくる光景が見たいですね。

















トラックバックURL : https://rokada.exblog.jp/tb/238759377
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by AWAchampion | 2018-09-15 22:39 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)