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大学生みたいな一日

今日は何だか古い映画が見たくって 名画座のハシゴをしちゃいました。

まず高田馬場 早稲田松竹で 
映画理論の父 セルゲイ・エイゼンシュタイン監督特集上映があり
「戦艦ポチョムキン」と「ストライキ」を見に行きました。
そしたら・・・なんとまさかの場内満席!
え?
エイゼンシュタイン特集で満席とは!
やるなぁ 早稲田松竹!

確かに考えてみれば、逆に映画館のスクリーンで見るのは珍しい
映画なのかもしれません。

◆「戦艦ポチョムキン」
エイゼンシュタインは映画のモンタージュ理論(映像文法)の父で
およそ100年前の人です。そして1926年に作られた「戦艦ポチョムキン」は
どの国のどの映画学校でも1学期に必ず見る映画です。
私も早稲田大学でも、London International Film Schoolでも
何度も見ました。

とはいえ10年ぶりぐらいに久しぶりに見たんですが
やはり素晴らしい。当たり前ですがアングルも絵の構成も完璧。
物語の緩急やカットの並びも当然完璧。
改めて勉強させられました。


◆「ストライキ」
「戦艦ポチョムキン」に先立ち1925年に作られた
エイゼンシュタイン 長編デビュー作ですが、これはポチョムキンよりも
ずっと映像に凝っていて、今の音楽MVに出てきそうな技法が
じつはエイゼンシュタインのデビュー作で使われていたという新鮮な驚きがありました。

私は「ストライキ」については多分30年ぶりぐらいに見たのですが
プロになって20年も経った今見た方が 勉強になった作品でした。

続いて、池袋の新文芸座へ
ここではメキシコの巨匠 ルイス・ブニュエル監督特集をやってました。
こちらもなんと満席!
うわぁ~凄いな。ルイス・ブニュエルで満席!

ルイス・ブニュエルは、もちろん「アンダルシアの犬」(ダリと一緒に撮った古典的名作)
は見てますし、ドヌーブの「昼顔」も見てます。
さらにイギリスの国立映画劇場で「忘れられた人々」も見ているのですが
今日やる「ビリディアナ」「皆殺しの天使」は初見でした。

◆「ビリディアナ」
1961年カンヌ映画祭 パルム・ドールの作品で、かなりスキャンダラスな話題を
さらった映画です。
あらすじは 修道院の美しく若いシスターが、上のシスターの勧めで
今までお金を出してくれていた血の繋がらない叔父に対して、気の進まないまま
お礼を言いに2泊3日の旅行に出ます。
しかしそこで叔父に睡眠薬を飲まされ、手込めにされてしまいます。
そのことを翌日なじると 叔父は自殺。
そのことで、シスターは修道院には戻れなくなります。

仕方なく彼女は、叔父が残した豪邸で浮浪者達を引き取り『地上の楽園』の
コミューンを作ろうとします。
そこへ叔父の落し種で今まで没交渉だったハンサムな従兄弟の男が帰ってきて
シスターを誘惑。
さらに自分が引き取ったはずの浮浪者たちにも、母屋のダイニングで物を盗まれ
壊されるだけ壊されたあげく
レイプされそうになり、コミューンの全員を追い払います。
最後に今までずっと拒否してた、従兄弟の誘いに応じ
夜中に男の愛人と男とシスターの3人でポーカーを始めます・・・。

っていう話。

えええええ!

メッチャ バッドエンディングですよ!
シスター良いところなしやん!

まあ要するにキリスト教で良く話題になる『神の沈黙』の題材なんですけど
(同様のテーマではイングマール・ベルイマンの「処女の泉」が挙げられますね。
 向こうの方が遙かに救いがある終わり方ですけど・・・)
映画としてはペキンパーの「わらの犬」から暴力で反撃する すっきり感とか
ああいうのを全て取り除いた 胸くそ悪い不条理だけを煮こごりにした映画で
でもまあ それが人間の悪徳を描いた作品だなぁ・・という
かなりブニュエルらしい 不条理な傑作でした。

◆「皆殺しの天使」
こっちはかなり有名な作品です。
1962年にメキシコで制作された不条理映画の代表作とも言える作品です。


あるブルジョアの邸宅に招かれた 20人の上流階級の男女
しかし なぜか部屋から全員出られなくなってしまいました。

なぜ出られないのか? その物理的な説明のないまま
物語は進行します。
閉じ込められた男女はやがて、獣性をむき出しにし始め
闘争を始めるのです・・・

で、疲れ果てて、何日経ったかも分からなくなったある日
何だか分からないけど突然出られるようになるのです。

が、数日後
その部屋の中で唯一亡くなってしまった老人のお葬式のために
市内の大聖堂に参列した市民が、今度は大聖堂から出られなくなってしまい、
むなしく市内に鐘が響き渡りましたとさ・・・。

って作品

ええええ?

謎設定&謎展開&バッドエンディング!!

何じゃこれ?

と声を上げてしまうぐらいの不条理な作品でした。
多分伏線とか、物理的な合理性とかそんなのを無視して
なにかの隠喩で突っ走っているのでしょう。
むむむ・・・
なんじゃこれ?

そもそも「皆殺しの天使」と言うタイトルもどうやら
スペイン語の直訳みたいですが、皆殺しにもならず
天使も出てきません。

新文芸座はパンフとか売ってなくて
当時のパンフのコピーがロビーに張ってあるだけなんですが
あまりの難解さに、見た後黒山の人だかりでした。

でも、コレコレコレ!
昔の映画はこういう 訳の分からない作品が多かった!
今の映画は語りすぎ!親切すぎ!
こういう訳の分からない作品こそ タマに見るとがつんと来るのです。

いやぁ・・・わはははは
面白い4本立てでした。






by AWAchampion | 2019-01-12 22:54 | 映画・演劇など | Comments(0)