2019年 02月 22日
今日見た映画「ファーストマン」「シティーハンター劇場版」
まあホッとしたこともあり 映画を2本見てきました
◆ファーストマン
「LALALAND」で名を売った デイミアン・チャゼル監督 ライアン・ゴズリング主演の
その次の作品は アポロ11号の船長で 月面に初めて降り立った人類として名高い
アームストロング船長のお話でした
これは「アポロ11号」というタイトルでは無く「ファーストマン」と言うぐらいで
アームストロング船長のキャリアを マッハ5を突破した
X-15実験機のテストパイロット時代から NASAに入る所
そしてジェミニ8号でドッキングに成功するところを経て
アポロ11号まで 本当に丹念に追っていきます。
当然クライマックスは 月面着陸で、人類史上最も派手な出来事なわけですが
タイトルからして、もうネタバレしているので、
チャゼル監督は逆に 非常に抑制的な演出で
物語の起伏を劇的に付けたり、作者の意図が分かるショットなどを
極力最後の最後まで廃して、テレビドキュメンタリーの取材みたいに丹念に撮っていきます。
またアームストロング船長をとても穏やかな人物で、自己コントロールをする人物として描き
それゆえに「コントロールできない出来事」に身を任せても何とか切り抜ける・・。という
キャラクターとして仕上げています。
それゆえ ゴズリングもあたかも笠智衆のようなアプローチで演じています。
チャゼル監督の絵作りも、85%ぐらいを手持ちカメラのドアップで構成して、
誰かが密着取材をしたような、不安定な絵を作り出しておいて
月面シーンを メチャクチャ安定した静かな絵作りにする事で、月面の非日常感を
演出することに成功しています。
丹念に取材をして、リアルっぽく見せる演出をした上で、最後の最後に2つだけ
映画的フィクションを混ぜる・・・。
チャゼル監督も思いきった事をしたものです。
あたかもそれは小津監督の「晩春」で、最後の最後に笠智衆が娘が嫁いだ後
無人になった台所で 剥いたリンゴの皮が全てを象徴する名シーンを彷彿とさせます。
これは、多分ですが2016公開の、近年のSFとしては素晴らしい出来だった
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」に大いに触発された部分が
あるんじゃ無いでしょうか?
撮り方的にはそっくりでした。
あの映画も、手持ちのカメラと、息づかいを重視した音響設定で
人間パートのリアルさを作り上げつつ、異星人コンタクトの部分はソリッドな絵作りで
非日常感を演出することに成功していました。
更に言うと、亡くなった子供のトラウマ・・・みたいなのも同じです。
ただヴィルヌーヴ監督は人間パートを、それこそ
伝説的な撮影監督ネストール・アルメンドロスばりの
マジックアワーにこだわって撮影することで、映画としての美しさを担保していますが
チャゼル監督は 60年代のアメリカの空気感にこだわりすぎているせいか
美しさには欠ける気はしました・・・。
全体としては なかなか私としては楽しめた映画だとはおもいます。
ただ・・・まあ欲を言うなら、実は宇宙飛行士はもっと人間くさくて
噂では、アームストロングとオルドリンは全然性格が合わなくて
(今作でも少し示唆はされますが)特にオルドリンは野心家で
月の一歩目をどちらが踏むか?で飛行船の中で最後まで揉めた・・・とか
後にアポロ13号を奇跡の生還劇に導く ジム・ラヴェルがNASA的には
エースパイロットであり、3人目として乗るはずだったがいろんな事情で
回り回って 乗れなかったとか色々面白そうなエピソードはあるんですけど
その辺は殆ど省いていて、地味です。
わざとなんですけど、まあ地味ですよね・・・。
ぶっちゃけ前述した『メッセージ』の方が良い映画だとは思います。
◆シティーハンター劇場版 新宿Private Eyes
続いて、1985年に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始し
累計5000万部を売り切った北条司のマンガが原作で
1987年~1992年までテレビアニメとしても絶大な人気を博した
「シティーハンター」が30年の時を経て
まさかのオリジナルキャスト・スタッフでの劇場版・・・ということで
いそいそと見に行きました。
この映画を見るなら、映画館にもこだわりたいです
なぜなら こんなに「新宿」にこだわりぬいた作品は無いからです。
ということで 歌舞伎町にあるTOHOシネマ新宿に行ってきました。
すると木曜の夜の回、いるわいるわ!40代の同胞たち!
とくに 当時女子人気が高かったこのマンガですから、女性の姿がたくさん!
殆ど40代以上の観客の熱気であふれていました
何しろ87年の超人気テレビアニメを
声優も監督もコンテも音響も作画も、それから中の挿入歌も
全部そのままで 新作を作ろうというコンセプト。
だから 正直映画が始まって 15分ぐらいは あまりの80年代テレビアニメの
雰囲気の濃厚さに、21世紀の頭ではついて行けませんでした。
やっぱり作画も粗いし、絵のアングルもいちいちダサいし
ディティールも80年代のままだし(それなりに高級で、セキュリティに気を遣ってるはずの
冴羽䝤の家のカギがサムターン式で、一瞬でピッキングされるのは、サスガに突っ込みたく
なりました。私の家だってカードキーです)
それに このマンガ最大の魅力の一つでもある「すぐ美女の着替えを覗く艶笑ギャグ」みたいな
ものも、今のコンプライアンスでは全く笑えるものではありません
なんですけど・・・
新宿の街は 確かに南口にバスタ新宿が出来たり、
東口の駅ビルがMY CITYからルミネエストに変ったり
しましたけど 基本的な雰囲気は80年代後半と全く変らないんですよね。
そこで この話を見ていたら・・・いつの間にか私は 東京に憧れていた
16歳の私に戻っていました。
だって 30年ぶりに小比類巻かおるの曲とかが流れるんですよ!
それも監督さんも同じだから 本当にあの頃のセンスとタイミングで!
普通使わないでしょ?21世紀なんだから。
いやいや、そしたらこれは 考えようによっては奇跡の映画じゃ無いですか!
だって1987年のアニメの新作ですよ!
アニメーションだからこそ出来る芸当。
15分を過ぎた辺りから 心をどっぷりと持って行かれました。
後は私が大学に入って上京した頃の90年代新宿なんかもオーバーラップして
いろんな思い出がフラッシュバックして、ただただ 感動のため息・・・。
私は大体映画館で映画を最前列に近いところで見ることにしている
のですが、エンドロールが終わって振り返ったら
40代の同志たちの「ああ21世紀に戻ってきちゃった」という
感動と寂しさが入り交じったため息で満ちあふれていました。
どう考えても40代殺しの一作でしたよ・・・。
by AWAchampion
| 2019-02-22 07:02
| 映画・演劇など
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