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JOKER 見てきました

さてさて、話題になっている映画「JOKER」ですが
早速見てきました

ここからネタバレしますけど、まあこの映画は何となくネタわかるでしょ?

そう、ある男が社会の矛盾の中で虐げられたがゆえに
悪役 ジョーカーになるっていう物語です!

まあ予告編はこんな感じ・・・。


バットマンの敵役である ジョーカーがいかに生まれたか?
という物語を描いた作品なのですが
これが ベネツィア国際映画祭で コミックの原作作品として初めて最高賞の
金獅子賞を受賞して、今年のアカデミー賞も最有力候補という作品なのです。

相当話題になっていたので、公開二日目に見に行きました。

ストーリーの舞台は、1970年代のニューヨークに酷似した架空の都市ゴッサムシティ。
神経を病み、生活保護を受ける男アーサーは、同じく病にある母を介護しながら
ピエロの仕事をしています。
しかし生活は上手くいかず、いつの日かスポットライトを浴びるコメディアンを夢見て
いますが、そのネタ帳は、電波系の笑えないジョークばかりが書かれています。

母親はその昔、ゴッサムシティの市長候補である大富豪のお屋敷でメイドをしていた人で
今の窮状を毎日 手紙にしたためるのが日課となっていました。

そんなある日 アーサーは、地下鉄の中で証券会社のエリートサラリーマンの酔っぱらいに
絡まれ、持っていた護身用の銃で彼らをぶち殺します。
そのことで、町にくすぶっていた階級闘争に火が付き、アーサーはいつの間にか
不満を抱えた労働者たちのアンチヒーローに祭り上げられていくのです・・・。

その後 彼はふとしたことで自分の出生の秘密を知ってしまいます。
母親の手紙には、アーサーは大富豪の落とし種だと書かれてありましたが
実は、母親は神経を病んだ妄想癖の女で、大富豪の家を首になった後、養子をもらい
虐待の限りを尽くします。それが実はアーサーだったのです・・・。

アーサーは自分が精神を病んでいるのが、母親の虐待に由来があると知り母を殺し
心配してきた友人も殺し、最後に大きなテロを仕掛けるのです・・・・


と、まあ 
救いのない陰鬱な話なんですけど、逆にですが・・・もともとこの話の着地点は
凄くわかりやすく「普通の人が すごい悪者になる」というところにあるので
アーサーに不幸が降りかかり、人生が上手くいかなくなること自体が「ポイントを貯めている」感があり
だんだんと殺人鬼になる様子に不思議な爽快感がありました。

しかも 神経を病んだ男の話で、妄想も含まれていて
どこからどこまでが 本当にあった話なのか?を少しわかりにくくしていつつ
最後に全部その辺の伏線が回収される形になっているので、脚本としてはとても良い出来だったと
思います。

まあ後味が最悪ですから・・・、
お勧めというわけではありませんが、「よくできた」映画であることは間違いありません。


そしてここからが本題ですが・・・。
アメリカのコミックの原作といっても 実は2社 大きいのがあります。
一つが「アベンジャーズ」シリーズや、「スパイダーマン」を作っている マーヴェル社
もう一つが「スーパーマン」「バットマン」シリーズのDC社です。

で、マーヴェルはソニーと提携して次々と特撮の枠を広げる素晴らしい ブロックバスタームービーを
作ってきました。
そして昨年はついに「ブラックパンサー」でアカデミー賞の優秀作品賞5つの中に入れることに
成功したのです。

逆にDCは、もともと「バットマン」「スーパーマン」という素晴らしい作品がありながら
マーヴェルの資金力に後塵を拝していました。

そこで・・・別の方法をとったのです。

それが、1970年代に世界中を席巻したアメリカン・ニューシネマの手法を使う事だったのです。

アメリカン・ニューシネマとは1960年代後半から70年代にかけて、ベトナム戦争に引きずりこまれて
景気が悪くなり、明るい未来が見えなくなったアメリカが、「イージーライダー」「俺たちに明日はない」
「明日に向かって撃て」「真夜中のカウボーイ」など、新しい価値観を作り出そうとする
若者たちの挫折と絶望を描いた作品群で、数々の名作が生まれました。

なかでもマーチン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」「キングオブコメディ」などは
その代表作の一つといってもいいです。

で、今回の作品はまるまる、アメリカン・ニューシネマへの深いオマージュと無数の引用で
構成されているのです。

アメリカン・ニューシネマはそれまでのミュージカルなどの大作映画と真逆で
ドキュメンタリー的な手法を得意としていました。

まさにこの映画も、本来架空の年のはずであるゴッサムシティを完全に1970年の
怖かったニューヨークを再現することで、我々をあの時代へと連れて行っているのです。

主演のホアキン・フェニックスは超熱演で
まさにあのころのデ・ニーロそっくりです。しかもこの映画にはデ・ニーロ本人も出てますから
その意図はとても明白です。

具体的には「タクシードライバー」のトラヴィスが、大統領候補を本当に撃ち殺した世界という感じで
随所に「タクシードライバー」や「キングオブコメディ」の引用が出てきます。

また私の第一感としては「タクシードライバー、狼たちの午後、ジョンカサベテスのFACESに似てるなぁ」
でしたから、スコセッシに限らず当時のニューヨーク派のアメリカン・ニューシネマそのものと
言った風情でした。

まさに50年遅れた アメリカン・ニューシネマの傑作という事は言えます。
ただ、後味がねぇ・・・
でも後味が悪いのはアメリカン・ニューシネマのお家芸とも言えますから、それも含めて
このジャンルの遅れた傑作と言えるでしょう。




by AWAchampion | 2019-10-08 23:52 | 映画・演劇など | Comments(0)