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「ドライブ・マイ・カー」がアカデミー賞にノミネートされましたね

今日 アメリカ アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞と
国際長編映画賞(旧外国語映画賞)に
日本の「ドライブ・マイ・カー」がノミネートされたとの
報道がありましたね。

昨年アメリカでも公開されて
オバマ元大統領が「今見るべき20本」に選出していたこともあり
今年1月に急いでみて来ました。

日本での上映自体は昨年から行われているのですが
まだまだ 皆さんの目に触れていないでしょうから
ネタバレをしたくない人は 逃げてくださいね!










さて、
もう大丈夫ですか?

この「ドライブ・マイ・カー」は
原作が村上春樹の短編で
それを 東京芸術大学の映像科出身の濱口隆介監督が
3時間の堂々長編にしたものです。

内容は 西島秀俊演じる舞台演出家が
結婚して30年になる女優で脚本家の妻と二人暮らし。
彼は 愛車の中で妻にセリフを吹き込んでもらった
カセットテープを聞きながらセリフを覚えるのが日課。

今の演目は「ゴドーを待ちながら」
西島の特徴は 別の言語を話す俳優同士が互いに自分の言語で演じて
それをそのまま舞台にするというもの・・・。

二人の生活は満ち足りていたが、ある日突然
妻はある秘密を残して 突然亡くなってしまう。

それから半年後・・・・

西島は広島のある市で行われる演劇祭の目玉として
2か月のワークショップを開き
1から演劇を作り上げるために招聘された。
今回の演目は、チェーホフの「ワーニヤおじさん」

彼の手法である 多言語コミュニケーション演劇のために
日本・韓国・台湾・中国・英語・そして韓国手話の俳優たちが
アジア各国からオーディションでやってくる。

彼は自分の車が重要な演劇空間の一部なので
毎日1時間程度の距離を劇場まで運転することを希望していた。
しかし 市からは「どうしても危ないからドライバーをつける」
と言って付けられたのが ほほに傷を持つ寡黙な若い女性だった。・・・

という話で、
多言語で作り上げられる演劇・妻の秘密・寡黙な女性ドライバーの話などが
多層的に組みあがる、非常に良く出来たドラマでした。

見た感想は やはり「久しぶりにまともな日本映画を見た」でしたね。
東京芸大が大学院に映画・映像科を開いてから20年ほど経つと思いますが
そこから多分初めてここまで商業的な映画を撮る映画監督が
出て来たんじゃないでしょうか?
濱口監督は私より7歳ぐらい年下ですが どうやら東大をお出になった後
東京芸大で映画を志したそうですから、1期生かどうかは分かりませんが
かなり早い段階の出身者だと思います。

まず特徴として挙げれるのが
多言語の演劇空間が作り出す、独特の雰囲気ですね。

どうしても 私たちテレビマンや、ハリウッドメソッドだと
分かりやすく言語で「AとBが対立する動機は、Aが発した「●●」というセリフだ」
見たいことを図式化して組み立ててしまいます。

それは時に情報を言語に頼りすぎるために、いわゆる「説明セリフ」が
使われることとなり、
さらに説明セリフを成り立たせるための、映像の「説明モンタージュ」を
形成することが、まさに逃れられない業のようについて回ります。

実際テレビの世界のプレビューは「いかにその説明モンタージュが
成立しているか?」に全てがかけられているので
ドラマ出身だろうが、バラエティ出身だろうが、その呪縛から逃れられません
多分広告の映像クリエーターも同じことだと思います。

でも映画は、そればかりでは無いのです。
少し難しい話になりますが、映画は1920年代にセルゲイ・エイゼンシュタインに
よって理論化されました。
当時は美術史的には「記号論」の世代で、
ドイツ的な 「Aという要素と 反発するBという要素がぶつかって、止揚する」
テーゼとアンチテーゼがアウフヘーベンするという例のあれが
美術的に適応さえていた時代です。

映像の要素一つ一つを吟味して、そのつながりによって
それぞれが表しているものとは別の、誌的な言語を生み出す・・・。というのが
エイゼンシュタインの「モンタージュ理論」でした。

それが、きちんと意識された映画を作られているという印象を持ちました。
それは元々 監督が商業映像の中で揉まれてきた方ではないがゆえに
純粋に映画学の方から作品を演出されているという事であるのでしょう。

さらに言うと 今回のネタである「多言語演劇」がそれをわかりやすく
図式化しているというのもあると思います。
これは、映画オリジナルの設定だそうですが、
そこからして非常に上手くはまっていますね。

で、多分ですけど
ちょっと逆説的な言い方ですが
これを 英語字幕で見ている海外の観客の方が もしかしたら
その構図自体を俯瞰で見られて グッとくるかもしれませんね…。
とは思いました。

私たちテレビマンが持つ「テレビ話法」はそれはそれで
エンタメの手法として必要なものだと思います。
でも、非常に良い刺激になりました。

3時間は確かに必要な時間だと思います。
でも好みを言えば あと20分ぐらい切っても成立したかなぁ?とも
思いましたけどね。













by AWAchampion | 2022-02-09 00:52 | 映画・演劇など | Comments(0)