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スピルバーグ版「WEST SIDE STORY」見ました

ようやく 映画音楽系の編集が一段落したので
急いで行ってきましたよ。
スピルバーグがリメイクした「WEST SIDE STORY」です。



前作は「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズ監督と
舞台版でも演出を務めたジェローム・ロビンスの共同監督。
作曲はバーンスタイン、作詞はソンドハイムという
まあ黄金の布陣で。世界映画史上に残る 大名作の一つです。

それを近現代映画の巨匠 スティーブン・スピルバーグが演出して
リメイクするというんですから、そりゃ期待しないわけないですよね。

で、みて来ました
ネタバレもするので 見てない人は逃げてくださいね!







はい、良いでしょうか?
既に世界映画に残る不朽の名作があるのに
リメイクをする一番の理由は、21世紀のリアリズム基準に照らし合わせる
事なんだと思います。

1961年版も「MGMで作っているミュージカルをロケで撮影する」という
大命題の元に撮影されたので、当時としては相当リアルなミュージカルだったはずですが
今回はさらに、ちゃんとプエルトリコ人を使ったり、彼らの虐げられた生活ぶりを
語ったり、町の雰囲気もよりリアル方向に回したり・・・という風なことに
気を使われています。

そういう「ポリティカル・コレクト」や21世紀のリアリズムをクリアしながらも
スピルバーグは極力 前作をリスペクトして
振り付け、絵のルック、衣装の雰囲気、大まかなセットデザインなどを踏襲して
作り上げています。

その意味では素晴らしい出来だったと思います。

ですが、正直私の感想的には
「う~~ん、79点かな?」でした。


その大きな理由は今作の撮影監督さんの言葉にありました。
「ロバート・ワイズの時代にはカメラを動かそうとしても動かせなかった。
 だけどカメラが主張する部分もあるはずだ。だから今回はそういうところに
 こだわった。さらに前作は街がきれいすぎる。
 今作は汗と砂埃にこだわった」とおっしゃっていました。

デモねぇ…それが、特に映画で言うマスターショット(引きの画で
シーンのベースとなるカット)の美しさを損ねていると思いました。
前作はとにかく、舞台演出家のジェローム・ロビンスが共同監督していたこともあり
かなり演劇的な構図なんですよね。
そこから、適宜、アップショットを重ねていった感じなので
マスターショットが本当に舞台のように美しく構成されていました。

それは構図だけでなく、色彩設計も同じです。
綺麗すぎるのではなく「美しさを求めている」のだと思います。
多分当時、ロケ―ション撮影というだけで、既にリアルは確保できていたので
その中の構図や色彩はかなり演劇的にコントロールしていたわけです。
それが前作の神話のような美しさを生んでいるんだと思います。

その意味では カメラの置き所、編集のテンポ(アップショットの使い方)
それに衣装の色彩などは、正直あんまり感心できませんでした。
多分スピルバーグはちゃんと 前作のように舞台的にある程度演出していましたが
特に「TONIGHT」のシーケンスは、アップショットを使い過ぎだと思いました。

また、リアリズムを求めたがゆえに
かの有名な ダンスホールでのトニーとマリアのシーンが
あのような時間が止まった・・・ような美しい演出ではなかったのは残念でしたね。

余談ですが私の母は、初めて父と宝塚歌劇団の稽古場で会った時に
あのシーンのように、周りが止まって二人だけが見えた・・・。と何度も言っていました。
「運命の恋」は、リアルを飛び越えるんだと思います。

今作の最も大きなリアルズムは プエルトリコ人をちゃんとラテン系にしたことです。
もちろん 前作のベルナルド役のジョージ・チャキリスや
マリア役のナタリー・ウッドは素晴らしかったです。

でも今回の二人もそれはそれで、悪くなかったと私は思いました。

ただねぇ・・・トニーがねぇ・・・好きになれなかったですね。
あのダンスホールのシーンが「裏手でコソコソ逢引き」みたいな感じにした分
なんか、ただの色男にしか見えなくて ちょっとイヤかも?でした。
あれじゃベルナルドが怒るのも無理ないですよね?
「時間が止まるぐらい 運命的な恋」でなくちゃだめなのに、
あれでは ホントに地元の元不良が、ナンパした…みたいに見えちゃいますよね?
あそこは 最もリアリズムを廃して、スピルバーグなりの「愛の奇跡」を
見せてほしかったですけどねぇ。

逆に今作のアニータは素晴らしかったですね。
前作はラテンアメリカの伝説的な女優 リタ・モレノが演じていて
今作もキーパーソンとして出てきます。
あのとんでもない名演を誰が超えられるのか?と思いましたが
今回の人も素晴らしかった。
聞けば、今世界で一番チケットが取れない ハリウッド版「ハミルトン」の
オリジナル版に出てる人らしいですね。
そりゃいいはずです。素晴らしかったです。

今回の方が良かったところと言うと
「アメリカ」のシーンですね。
夜の室内だったシーンを 昼の表のシーンにしたのは大正解。
素晴らしいシーンに仕上がりました。

まあ全体的に 前作に似ているだけに
前作のとんでもない素晴らしさが引き立つ・・・ という結果では
ありましたが、悪い映画では決してないと思います。

例えるなら「ゴッドファーザー」をリメイクしたら
誰だって 前作と比べられるし、
前作を超えられないと思います。
全く同じことですし、それにしちゃ頑張ったと思いました。





by AWAchampion | 2022-02-24 19:10 | 映画・演劇など | Comments(0)