人気ブログランキング | 話題のタグを見る

宝塚版「鴛鴦歌合戦」

さて、父のレビュー「GRAND MIRAGE!」に関しては
前のブログで書きまして、ありがたいことにアップロード当日だけで
2000人の方に見ていただきました。

で、そこで併演の「鴛鴦歌合戦」についても書きますと予告していましたので
書きたいと思います。

鴛鴦歌合戦は、映画マニアなら誰もが知る 時代劇ミュージカルの珍品です。
1939年日活製作で、監督はマキノ雅弘
主演は片岡千恵蔵、志村喬、ディック・ミネらです。

この映画はまさに太平洋戦争開戦直前で、尺も69分ですし、
暗い世相を笑い飛ばそうと企画された、能天気プログラムピクチャーで
映画ファン中では「愛すべき珍品」扱いの作品でした。

それを宝塚大劇場で!80人の団員を使って!
しかもニヒルな男前の風貌である スター柚香光さんが?
という事でかなり話題になっていました。

私も、この愛すべき珍品の中で黒澤明監督の「七人の侍」で侍のリーダーを
演じた志村喬さんが朴訥な声で歌う
「ほ~れほれほれ この茶碗。ちゃんちゃんちゃわんと音も良し~♪」の歌や
ディック・ミネが歌って笑いを誘う
「僕は陽気な殿様~♪」などを宝塚で使うのかしら?

と半ば半信半疑で見てみました。

で、緞帳が上がるといきなりその映画版「鴛鴦歌合戦」のオリジナル曲メドレー!

すげぇ!

ワハハハハ!

アッハハハハ!

ホントに客席で声を上げて笑いました。
演出の小柳さんは、若き俊英演出家と伺ってますが、まんまと彼女の手にはまりました。
まさかオリジナル曲を冒頭から宝塚のスターさんが歌うとは!!
正直宝塚ファン、柚香光さんファンはどう思ったか?不安ではありますが
少なくとも邦画ファンの私は、ここで大笑い!心を掴まれましたよ。

というのも、映画のミュージカル舞台化は、多くの場合
舞台のオリジナル曲がほとんど…という事が主流です。
これは第一にはオリジナル作曲家への権利関係の問題がある
というのが大きいと思いますが、
もう一つは舞台は舞台でそれに合ったものを作りたいと演出家が考える
事も多いという事です。

例えばミュージカル「FAME」は80年代初頭に大ヒットした映画「FAME」が
元になっていますが、かの有名なテーマソングは カーテンコール後のアンコールでしか
歌われません。

そっちの方向もあったかと思うのですが、演出小柳さんは
ほぼ全部 オリジナル曲をこの芝居の中に入れたんじゃないですかね?
この度胸には 驚きましたし、正解だと思います。

ストーリーは正直 元がそんなに深刻な話じゃないですからね。
というか、日中戦争が行き詰まってる最中の映画なので、むしろ意図して
バカバカしく作ってあるのです。
多分「丹下左膳 百万両の壺」とかが下敷きになってるんでしょうが
元が分からないぐらいコメディになっています。

で、町娘役の娘役スターさんが、肩の力を抜いた良いお芝居をしていて
それがニヒルなスターさん、柚香さんとの対比を生んでいて、
夏休み興行らしい 肩の力を抜いて家族で楽しめる
宝塚らしい「萌えキュン」芝居になっていました。

正直映画「鴛鴦歌合戦」は女優は二の次三の次で、
若いかわいい子が出てりゃ良いや…みたいなところもあります。
それが、ご自身が女性という事もあり、演出小柳さんが
ちゃんと登場人物の女性に感情移入できるようにお書きになったのは
とても良かったと思います。
特に町娘の人物造詣は、そこだけ妙にリアル言葉で、客の感情がそこに
落っこちるようになっています。女優さんの演技力も相まって
イイ感じだったと思います。

で、私はテレビ演出家として、半分同業者として見ていて
「これは大変だったろうなぁ」という点を4つ書きます。

1)そもそもが69分の小品を90分の尺に伸ばすのは大変だったと思います。
  テレビでもショートしているものを、あとから伸ばす作業が一番
  大変です

2)この小さな作品に、80人の団員それぞれにそれなりの役を与えるのは
  本当に大変だったと思います。特にセカンドスター、ネクストスターにも
  それなりに格好いい役を上げなきゃいけない宝塚ですから
  これは大変ですよ…。セカンドスターさんが「おバカで陽気な殿様」
  だったところに苦労の後がありましたね(笑)

3)私は基本団員さんには詳しくありません。
  しかし一見さんの私でも、柚香光というスターさんは、ニヒルで「陰」の魅力の
  あるタイプの男役さんだというのは分かりました。
  そんなスターさんにこの演目を充てるのはご本人の説得も含めて
  大変だったんだろうなぁ…。と思いました。

4)映画自体が短い上に、書かれている曲もそれぞれ短く、
  さらに大編成のオケ曲ではありません。冗談歌謡と言われるジャンルだと思います。
  そういう肩の力が抜けきった曲を、とても誠実にストーリーの中にも
  織り込んでいましたが、宝塚大劇場の広い間口の芝居に合わない部分は
  多々あったと思います。
  要するに 曲の尺が足りなくて、移動しきれないうちに終わっちゃうわけですよ・・・。
  そうなると余韻的なものもなくなるし、シーンのぶつ切り感が出てくることは
  構造上避けられなかったと思います。
  でも、相当丁寧な芝居をつけて、そこを埋めようとしているのは良くわかりました。
  大変だったろうなぁ・・・と思いましたよ。

オールド宝塚ファンなら知ってると思いますが
「魅惑」の併演で阿古先生がおつくりになった
伝説の珍品コメディ「ミル星人パピーの冒険」というのが
ありました。
何となくああいうオトボケコメディの雰囲気を強く感じましたね。

あれは世紀のコメディエンヌ 瀬戸内美八さんがやり過ぎなぐらい
コメディ芝居をやって、大人はどうだったか知りませんが
小学生だった私は大笑いしたのを覚えています。
私の世代には強烈な印象が残っていて、小学校の同級生でもあった
元星組の都布良ひとみさん(音楽の中元先生の娘さんですね)に
宝塚の取材で話を聞いていた時に、その話になって爆笑した
覚えがあります。

つまり、肩の力が抜けていて、人々の記憶、
特に宝塚ガチ勢じゃない人の心に残りやすい、
素敵な作品だったなぁというのが全体の感想ですね。

これ、毎公演宝塚を見ている・・・とか
柚香光さんのガチファンの方のご意見も聞いてみたいですね。



by AWAchampion | 2023-09-18 16:40 | 映画・演劇など | Comments(0)