2023年 12月 26日
ゴジラ-1.0を見ました
山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」を見に行ってみました。
お話は戦時中、特攻隊の敷島が自分の特攻機の不具合で
大戸島という、少数の守備兵だけがいる基地に不時着するところから
始まります。
その夜、その基地がゴジラに襲われ…。
命からがら生き延びた敷島は 戦後日本に帰り
焼け野原の東京で、ひょんなことから出会った子持ちの女性と
同居することになり、新しい生活を始めますが、
ゴジラの事がフラッシュバックして・・・。
そんな中ビキニ環礁の原爆実験を機に ゴジラが
東京を襲う事になり、しかしGHQの占領下で
彼らの協力を得られない日本政府は
旧海軍の残党を集めて民間で戦う事を要請します。
敷島は戦後残った飛行機で特攻を試みるのですが…。
という作品です。
山崎貴監督と言えば「三丁目の夕日」でおなじみなように
戦後すぐの東京、有楽町の日劇がゴジラに襲われるような
特撮は非常に素晴らしかったですね。
全体的にゴジラの登場シーンは恐ろしく。
初代のゴジラを踏襲したような感じで、とても良かったですし
ゴジラが「ゴジラの本能」でのみ動いていて、人間が振り回される様子が
きちんと描かれていてよかったです。
また、お話の後半の人間模様や、彼らの動機については
なるほどと思わせる運び方で、
アメリカでの評にある「人間ドラマ部分が優れていた」
というのは分かる気がしました。
しかし・・・
私は山崎貴監督作品で、いつも気になることがあるのです。
彼は「永遠の0」や「宇宙戦艦ヤマト実写版」などでも
繰り返し 海軍組織の描写をしているのですが
そこに出てくる海軍の上下関係が何とも緩いのです。
それこそ上官と部下が連れだって歩いて
大学のサークルの先輩後輩ぐらいの緩い上下関係を
思わせる会話をしているのが、彼の映画の特徴なのです。
今回の映画も、物語全体のキーとなる
大戸島の様子にそれは現れています。
この物語全体が、特攻を逃れた敷島と
その秘密を知っている整備兵 橘の対立と和解の物語が
縦軸になっています。
が、敷島と橘の階級差が不明で、基地でどちらが階級上かも
分からないのです。
(敷島は特攻兵なので 数階級特進の少尉であることは示されますが
橘はいわゆる客人に対する敬語ぐらいしか使わず、
その後ゴジラが出た時に 命令じみた事を言うのですが・・?)
ホモソーシャルな価値観の中での理不尽な縦社会は、
ぶっちゃけ映画の監督と助監督。
高校運動部の先輩後輩。
そして、それこそ宝塚歌劇団にもある、普通の事で
そこから生まれる緊張感とか、対立、そして不思議な連帯感というのはあると思うんです。
でも、山崎監督はそこを全て無いものとして描かれるのが
かなりリアリティの問題として気になりました…。
また、敷島役の神木隆之介さんは、戦時中の特攻兵にも拘わらず
髪の毛が坊主でないところもかなり気になりました。
これについては、実はネットで「いや、陸軍は丸坊主だったが
海軍は特攻兵も含めて髪の毛は生えていた」という資料を出されている
方がいて、山崎監督もそれに従ったんだと思いますが、
私は久世光彦の弟子で、戦中戦後ドラマを多くやっていた演出家の
助監督でした。彼が戦争ものをやるというと、エキストラに行くかも
しれないので社員はみんな丸坊主にさせられたものです。
昭和10年生まれの演出家が兵隊を丸坊主で表現しているので
やはり、大多数は丸坊主だったのではないでしょうか?
そのあたりからも、なんとも緩さを感じたのです。
また、島が最初に襲われるシーンで
夜に空襲警報が鳴るのですが、あの灯火統制下で
彼らは明かりをMAXでつけたまま行動するのです…。
イヤイヤいや…。
もう制空権を失った時代の日本の基地で、夜間空襲警報が鳴って
明かりをまず消さないなんてことは無いですよ…。
という風に、戦時中の描写はかなり気になりました。
これについては、FACEBOOKに書いたところ
私のカノックスの上司で、テレビ版「赤ひげ」などの監督を務める
猪原達三さんから15年ぶりにご連絡をいただき
「その通りだ!」とご賛同をいただきました。
ですからあんまり手放しではほめられない映画ではありましたね…。
by AWAchampion
| 2023-12-26 03:35
| 映画・演劇など
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