2025年 09月 01日
父・岡田敬二の「愛、Love Revue」を見ました
さて、先日私の父である、宝塚歌劇団演出家 岡田敬二の最新作
「愛、Love Revue」を東京宝塚劇場で観てきました。
以前も書きましたが、40年ほど前、父は良く
「レビューについての系統立てた劇評が日本には存在しない。
大体が芝居の事だけ書いてあって、『併演はファーストラブ』などの
一言だけ。それでは日本のレビューは育たない」と、インタビューなどでも
吠えていました。
確かに映画監督大森一樹氏の言葉を引用すると
「作品は優れた評論を得て完結する」という事ですから、それが無いことは
とても寂しい事です。
そこで、一応演出家歴30年に迫ろうかという私が、
ちょっと詳し目に書こうと思います。
とはいえ、まあ家族ですから、そこは大目に見てください…。
◆OP
岡田敬二作品は、多くの岡田組のスタッフさんがおっしゃるように
オープニングの王道パターンがあります。
それが、【タイトルを書いた電飾が出ている】【壮大なイントロが始まると
同時にミラーボールが回る】というものです。
今回はまさにそれ!
まさにパターンAです!
(ちなみにパターンBは、「ル・ポワゾン」のように
サス明かりのなかに 後ろ向きのスターが立っている・・・ですね)
これこれこれ!いやぁ、オカダケイジが帰って来た!!
そんな感じの入りでした。
そうしたらいきなり、大階段がど~~ん!
そこに燕尾の男たちがフォーメーション!
おお!
・・・で、ふと思ったのです。
「Revue」とはもともとはフランス語で回顧するとか
来し方を振り返る…という意味を持つ言葉です。
そこでロマンチックレビューシリーズ23作を並べてみた時
父や岡田組のスタッフの皆様の年齢を考えても
このシリーズが大いなるフィナーレに近づいていることは
明らかです。
そこで宝塚レビューのエンディングのアイコンである大階段から
始まるという事は、父が自分のキャリア全体を回顧するような
作品を作ったのだな…。と気が付いたわけです。
で、タイトルを見ると「愛、Love Revue」じゃないですか!
「私は愛を持って、来し方を今一度見つめます」と書いてあるような
もんですよ。
そう考えると胸が詰まって、心が揺さぶられ、
開始2分で客席で号泣していました。
回りの人も、銀橋に出て来たスターさんも、ひどく泣いてる
オジサンをみてギョッとしていましたが、こればっかりは
家族ですから許してください。
父に実際に聞いたら「いや、普通に作っただけだよ?」と
とぼけていましたが、実際この作品は
そもそもテーマソングからしても過去の名作から来ていますし、
その後のシーンも「ロマンチックレビュー名シーン集」の
色合いが特に濃い作品です。
それはそういう意図をもって作られた作品でもあり
一人の演出家が「私もこういう道を歩いて皆さんと一緒に
ここまで来た。ありがとう」という思いを乗せている
作品とみていただいて構わないと思います。
で、曲自体は以前からある「I Love Revue」なのですが
岡田敬二演出の巧みな所は、そのレイヤーの重ね方にあります。
同じモチーフながら、時にスイング、時にタンゴにアレンジされた
曲の中で、次第に衣装が色づき、登場人物も効果的に紹介されて行き
最後にオープニングが大団円を迎えるのです。
シンプルで、似たようなものに見えるものが、グラデーションをもって
徐々に変わっていき、最後に大変化する・・・
そこが演出の特徴だと言えます。
ここにある種の「品の良さ」の源があるんだと思います。
さらに、今回プログラムで装置の大橋先生が語られていたように
【アール・ヌーヴォ】と【白井鐵造先生のピンク】の二つの
キーワードが出てきました。
そもそもアール・ヌーヴォ自体が、白井先生がパリに行って
「モン・パリ」を作った1920年代に流行った美術様式です。
そこからも、白井先生の最後の弟子を自任する父らしい
セットなのだなぁと分かります。
そこに、今回装置を担当された川崎さんが、藤の華のイメージを
つけられて「パリと日本」がつながった、まさに白井先生的な
世界感も表現出来て、本当に「岡田敬二が見て来た人生」の
レビューが始まった!という感じでした。
◆第2章
ここは普通は、セカンドスターの持ち場ですが、スターの二人が
歌い上げました。
私は花組も含め演者さんの事は殆ど何一つ知りませんが、
スターさんに勢いがあるが故の演出だというのは分かりました。
◆初恋
父は、学生時代にMGMミュージカルを浴びるほど見ていました。
そのなかで、例えば「パリのアメリカ人」などでは
ガーシュインのクラシックに合わせて踊るジーン=ケリーなどが
非常に魅力的でした。
当時はアメリカでは、ジェローム=ロビンスなどの才能ある
振付師が「アクションバレエ」という感じで
「略奪された七人の花嫁」など、クラシック音楽にあわせつつも
ダイナミックなバレエシーンを作り上げていた時期でした。
そのころの映画に強いあこがれを持つ父ですから、
同じく、クラシック×バレエ×男性役 という構図が出来上がったのでしょう。
そこで、ロマンチックレビュー前夜ともいえる「ジュテーム」あたりから
クラシック音楽を使ったシーンを多く作っています。
今回も「Amour、それは」で北翔さんがやった名シーンを
再現していますし、他にも「夢、フラグランス」での
プッチーニ「お父様おねがい」などのシーンも有名ですよね。
前作「GRAND MIRAGE」でも「韃靼人の踊り」がありました。
ベテランレビューファンならそういう名シーンを思い出して
いただいたのではないでしょうか?
このシーンのラストには、まさにその「ジュテーム」の
大浦みづきさんを髣髴とさせるようなタコも出てきましたしね…。
◆追憶の歌
ここは、謝珠栄先生の影響が色濃く出ているシーンです。
額縁に描かれた人物と自分との葛藤のようなシーン。
これは、父が1970年代初頭にロンドンに留学した際に
流行っていたロックオペラ「ファントム・オブ・パラダイス」などにも
その着想の芽があるのかもしれません。
そこに謝先生の情熱的な踊りが加わり、とても
印象的なシーンになりました。
また、このシーンを少しダークな色調にしていることが
次の中詰めに対して非常に効いていますね。
◆ラモーナ幻想
この「ラモーナ」という曲も1927年に発表された曲で
まさに「モン・パリ」辺りの創成期レビューを思わせる
音楽です。
それを先に書いた巧みなレイヤー分けで
32小節ごとぐらいでアレンジが変わっていき
ダンサーも変わり、衣裳もパステルカラーでありながら
ちょっとずつ変わっていく…。
そのことでリズムとグルーブが視覚的にも生まれ
それが大団円へと突っ走る…
このあたりの中詰めの演出は宝塚歌劇団ならではのものです。
さらに今回は家族なので、かなり前の方で観させていただいたのですが、
その位置で拝見すると、
曲に合わせて演者さんが急いで転換するために走り去ることで、
32小節ごとに舞台上に風が吹くんですよね…。
水色の風、黄色の風、ピンクの風、シアンの風、マゼンタの風・・
それが最後に重なって全員が舞台上に揃うと
風がやんで、気温が上がるんですよ。
これはまさに舞台芸術ですよねぇ…
今回もそれを堪能させてもらいました。
特にここは衣裳の色合いが素晴らしいですね。
ディズニーランドで使われているようなパステルカラーで
暗部も紫などを使って極力華やかに仕上げている感じが
モダンで素敵でした。
◆愛の誘惑
これは懐かしいですね!まさに喜多先生節!
これ、なんでしたっけね?
多分「ル・ポワゾン」なんでしょうけど、
古参岡田敬二ファンとしてはやっぱり
寿ひづるさんの「アップルツリー」を思い出しますよね?
あと、このモチーフを「ボーイ・ミーツ・ガール」などでも
見た気が…。
ここはやはり喜多先生の「男役の美学」をじっくり味わう場所でしょう。
そしてここで描かれているニューヨークっぽい摩天楼のイメージは
父が、ロマンチックレビューを始める前は、メインのモチーフの
一つでした。
父と話したことはありませんが、70年代に流行った
「Just the two of us」とかマンハッタントランスファーとかが
好きだったんじゃないですかね?
ただ、ここで使われている音楽自体はもっと古めのジャズで
これも40年代とかにブロードウェイで流行った感じの
ジャズでしたね。
父のロマンチックレビューシリーズのもう一つの特徴は
生楽器に合う年代の音楽が使われているという事ですね。
その昔、父はフォークソングや、ロックも積極的に
取り入れたショーを作っていましたが、ある時期から音楽も
1920年代~60年代ぐらいまでのモノに割と絞って
イメージを固定させるようになってきました。
これには賛否両論もあるようですが、テレビマンから見ると
イメージが固定されて見やすくなって良いと思います。
◆ロケット
ロケットは、よく背の低い人が真ん中に配置されて
隅の方に若い男役さんが割と場違いにラインダンスをやってることが
多いですが、今回は逆でしたね。
振付の方が、いつも岡田組で観る方と違う人だったので
ちょっと新鮮ではありました。
◆熱愛のボレロ
これは多分「ラ・カンタータ」からのシーンですね。
私が父にロングインタビューをした本の中で
父は「この曲は妻を思って書いた」と
言っていました。
出会ってから間もなく60年になる妻を思って
今回も出したのでしょうか…。
◆エンディング
エンディングを見ながら、
テレビマンである私は「このシーンをテレビで作ろうとしたら
幾らかかるんだろう…」と眩しく見ていました。
変な話ですが、スターさんが背負ってる羽だけで
30分番組1本の総予算と一緒です。
下手すりゃ2本作れます。
このエンディングだけで、ある番組ワンクール?
いや、半年分ぐらいの総予算が!と思うと
本当に宝塚歌劇団のレビューは贅沢な芸術だなぁと
うらやましく思います。
と、長くなりましたが
こんなことを思いながら、スタート2分で泣いてました。
最近のショーのファンの方からしたら
「岡田先生の作品は、スターが客席に降りてこない」
「見たことあるシーンが繰り返される」
「曲調が古い」
みたいなことを思われる人もいるでしょう。
実際そういう声も散見します。
しかしまあ、それは今30代~40代の若い演出家さんが
新しいものを作って行かれたら良いと思います。
実際父も30代の頃の作品は、いまとはずいぶん違いましたし
もっと未来っぽくて、デジタルで、ロックで、スペイシーな
作風でした。
色使いだってもっとビビットでしたしね。
それに、男役さんをカワイイ女の子にするシーンも必ず入っていて
・・・当時でもかなり不評でした(笑い)
セカンドスター時代の麻美れいさんなんて、
ほぼ毎回ミニスカートのチアガールになって
スターの汀夏子さんとのコミカルなシーンに出てましたね…
そういうのを通って、今のスタイルにたどり着いたわけで、
この白井先生からの伝統は、21世紀の今後も
残した方が良いと、オールドファンになった私も思います。
by AWAchampion
| 2025-09-01 13:03
| 映画・演劇など
|
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