カテゴリ:映画・演劇など( 135 )

映画を見ましたシリーズが続きますが、
今回は「借り暮らしのアリエッティ」です。

この映画はネタバレバリバリしますので
今から見る方はにげてぇ・・・・!





物語は、イギリス式の庭園というか、「西の魔女が死んだ」の梨木里香さんが書きそうな、郊外の荒れた洋館に心臓病の転地療養に来た
ショウ君が
庭で小人の少女を見かけたことから始まります。

少女はアリエッティ。彼女は父と母と3人だけで、ショウのおばあちゃんの家の地下に住み着いています。

彼ら小人族は、人間の家から砂糖や茶、水、電気、クッキーなど
色んなものを借りて暮らしています。
今日はアリエッティにとって初めての「借り」の日。
ドキドキワクワクしながら人間の家へと入っていくのですが、
ショウ君に見つかってしまいます。

そこからアリエッティとショウ君の不思議な心の交流が
始まります・・・。

というストーリーですが、メインストーリーは
「人間に見つかった」→大ピンチ→
「ショウ君の助けで逃げ出すことが出来た。」

という非常に簡単なものです。

にもかかわらず、この映画を佳作たらしめているのは
やはりスタジオジブリのビジュアルイメージの豊かさです。
人間そっくりの小人族と自然との共生を描くことで、
いつものジブリの思想もみえますし、何より
良質の絵本を読んでいるかのような、本当に素敵な
ビジュアルイメージが続きます。

それに神木君、志田未来ちゃんの声優ぶりも堂に入っていて、
非常に心地よく、見ていてマイナスイオンに満たされる映画です。

が、まあメインディッシュにはなれない、本当に
佳作の小品であることも事実です。

その一番の原因は、物語の中で帰結点として語られる
「アリエッティ家族の引越しが成功するかどうか?」

「ショウの心臓手術は成功するのか?」という事が
全く回収されないという事です。

確かに話のメインテーマは誰が見ても
アリエッティとショウの初恋とその痛みなんですよ。
そりゃそうなんですけど、観客としては
一応帰結点は回収してほしい気がしました。

アリエッティ家族のほうは、なんとなく希望にあふれた
アングルで終わるので、美しい未来が待っているんだろうなぁ?
という事は勿論分かります。

しかしその後ラストカットが、夏の庭のあまり映らなかった
温室の引きで終わるので、それは
「ショウは手術が失敗して、もう二度とこの庭を見ることがなかった」
という暗示と取られても仕方がないものだというところに
すわりの悪さがあるんだと思います。

例えばピクサーなら エンドロールのバックで
冬になったシーンをさりげなく入れるでしょう。
例えば新居で暖炉の前にいるアリエッティと、
だんろの前で、アリエッティの髪留めをドールハウスに
しまっているショウ君とか・・・。

そのぐらいで良いんです。別に大きなシーンを作れといっている
訳ではありません。
しかし、とにかくちょっと投げっぱなしな感じがしました。


良い映画であることは間違いないですが、
足りない要素もかなりある映画だと思いました。


まあそれとは別に。
あれだけ床下に便所コオロギとネズミがいるんだったら
小人がいようがいまいが、ちゃんとネズミ駆除業者を入れた方が
いいですね、あれでは転地になりません。

あと、結局ショウ君が良かれと思ってやったことは
全てアリエッティ家族を破滅に導いていますよね?
それは脚本のチョイミスだと思います。
by AWAchampion | 2010-08-09 21:04 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

「告白」を見ました

映画を見ましたシリーズ。
今回は「告白」を見ました。

例によってネタバレしますが、もう上映が終わりますから
いいでしょう。
読んでくださいね。


原作はかなり売れた小説ですが、私は読まずに行きました。

冒頭、牛乳パックが配られる中学校は、すっかり学級崩壊していて
子供たちは、全然松たかこ扮する女教師のいう事を聞きません。

女教師のリアルな言葉よりも、子供たちが携帯のメールなどで
バーチャルにつながる言葉のほうが重いという雰囲気が
CM出身の中島監督のスタイリッシュな絵で描かれます。

そのうち、彼女は自分の娘が、このクラスの一員に殺された・・・。という
衝撃的な告白をさらっとして、話は急激にぐんぐんと動き出します。
さらに、牛乳にエイズの男性の血液を混ぜた・・・という告白をして
彼女は出て行きます。

その後、ストーリーは
天才少年・少年の共犯者・引きこもりの親・そして学級委員の少女の
告白を通してドンドン悲惨なほうへと転がっていきます。


私の印象としては
同じCM監督である市川準さんが作った「ノーライフキング」に似ているナァ・・という
感想でした。
あれも、リアルなコミュニケーションではなく、ネットのざわめきを子供たちだけが受け止める
という話で、それがCM的な映像の中に閉じ込められているという点で、
志を同じくしている作品といえます。

こういう、大人のリアルなコミュニケーションとは違うところに、子供たちのリアルがある・・
と言う話には、CMっぽい映像は上手く馴染みます。

なんだか この映画は「小説 告白」のプロモーションビデオのように見えました。
なので映像的な刺激も多いし、話は過不足なく伝えられているので、
かなり視覚的には楽しめました。

ただ、井筒監督や鈴木則文監督が批判しているように
ここには、バイオレンスの面でのリアルが全くありません。

例えば 松たか子の子供を殺した中学生が、母親を殺すところとか
天才少年が同級生を殺すところなどは、本当に全くリアリティがないというか
なんというか、
頭の中の殺人・・・という感じがします。
実際には脂と血と反吐と便とのにおいがして、殺人は汚いものでしょうし
もっと殺人者の思いは、絶望的なものでしょう。

特にラストの天才少年が母の研究室を爆破する
シーンは要らなくないですか?
まさに画竜点睛を欠く・・・みたいですね。あれは松たか子の電話だけのほうが
効くと思いました。

ですから、
2時間のビジュアル旅行としてはいい作品ですが、
まあ、映画としてはソコソコというのが私の感想でした。
by AWAchampion | 2010-08-09 01:04 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

昨日、夏休み中の渋谷で
「トイストーリー3」を見ました。

普通は私、まあ字幕版を見るのですが、今回のこの映画は
ほとんどの劇場のほとんどの回が吹き替え版で上映されており
私も今回は吹き替え版で見ました。

すると客層は 中・高校生ぐらいのグループと
幼い子供をつれた親子連れの2タイプにはっきりと分かれていて
逆にこの映画がターゲットとする客層の雰囲気をリアルに感じられる
良い環境で見ることが出来ました。

私は第一作の「トイストーリー」は劇場で見ています。
当時はとにかくピクサーの3Dアニメがはじめてであった
という事もあり、技術力に圧倒された想い出がありました。

しかしそれから15年近くたち、実はピクサーの魅力は
その脚本力の高さであるという事は、皆様のご承知の
事と思います。
今回の映画も本当に脚本が良くできていました。

特に感心したのは、そのおもちゃのキャラクター達の
性格設定のすばらしさです。
おもちゃたちに割り当てられた性格が、本当にその玩具の
特性から派生しているであろう、信じられる性格である
というのが本当にすごいです。

一人ひとりのおもちゃの性格が、5歳の子供たちにも
納得できる形で完璧に書き分けられているので
どんどん感情移入が出来るのです。

さらに、この物語は主役こそカウボーイのおもちゃ
ウッディですが、均等に誰もが活躍の場を与えられていて
「人間は誰しも、自分の特性に合った活躍の場があるんだ」
という事を強く教えられます。

アメリカの子供番組に関わった経験から
かの国では「基本的に世界に悪い人はいない。考えの違いはあるけれど
それは理解したうえで乗り越えていくものだ」という
教育思想がしっかりしていて、勧善懲悪を好む日本の
アニメとはちょっと違います。

今回のトイストーリーでも
ほとんどのキャラクターは、本当に悪くは描かれません。
ただ、あの熊のヌイグルミだけは最後まで悪いので
それが逆にストーリーに強烈なインパクトを与えます。


このストーリーの肝は、やはり最後の
アンディとおもちゃたちとの別れのシーンでしょう。
本当に泣けます。
特にアンディが、ウッディを手放さなくては・・と
なる辺りの表情や、
ウッディを抱きしめて「彼は僕が覚えていないほど前から
一緒にいる、僕の親友なんだ。」と語りかけるところは
もう号泣ですよ。

ボイスにも書きましたが、僕も泣いていましたが
僕の後ろの列に座っていた5才ぐらいの男の子が
ラスト30分感動で号泣していました。

そのぐらいの男の子は怖くて泣くことはあっても
感動で泣くって中々ないですよ・・。

子供向けコンテンツのクリエーターとしては
本当にすばらしい体験をしましたし、深く嫉妬もしました。

いや、ほんと
どう考えても傑作です。
特にトイストーリーシリーズの中でも一番の出来だと思います。


ただし!一点だけ。
所ジョージのバズ・ライトイヤーの吹き替えはどうしてあんなに
下手糞なんでしょ?
アレはダメですよ・・・。

あと、保育園の子供たちの吹き替えの声で
今井悠貴くんのクレジットを見ました。

彼は5年ほど前、まだ彼が5歳の時にセサミストリートで
一緒に仕事したのですが、幼稚園生ながら
本番の前に「監督・・・ぼく演技プランが2つあるんだけど
どっちがいいですか?」と聞いてきた大物です。
是非、良い役者になってほしいです!
by AWAchampion | 2010-08-08 00:59 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

アウトレイジ 見ました

北野武監督が久々に、得意分野に戻って来た!と評判の
「アウトレイジ」を見に行きました。

以後、例によってネタバレになりますから、
これから見る人は逃げてくださいね!!






新宿歌舞伎町の映画館に、まさにぴったりの映画でした。
とにかく映画予告編の惹句にもありましたが
「全員悪人」しか出てこない映画です。

この映画の特徴としては、
普通のヤクザ映画だと、見た後ヤクザになりたくなるものですが
この映画を見た後は絶対ヤクザになりたくないと強く思える
ストーリーになっています。

「ゴッドファーザー」「スケアクロウ」といったマフィア映画や
仁侠映画に特徴的なのは、
暴力という過剰さがあるにせよ、そこには親子関係の強い愛情や
絆が感じられる、濃い人間関係です。

過剰な欲望・過剰な愛情・過剰な憎悪 そして過剰な暴力
これがヤクザ・マフィア映画の特徴です。

しかしこの作品では全く逆で、巨大暴力団のそれぞれの
立場の人間が、互いに非常に冷たい関係を築いていて、
親子関係と言うよりも、巨大企業の上司と部下に見えます。

つまりたまたま自分の上に今いるだけで、全く尊敬もしていない
という関係性の中で、人間関係と言うよりも
巨大暴力団という装置によって、結びついているヤクザの姿が
描かれていくのです。

私はそれほど 沢山のヤクザ映画を見ているわけではありませんが
それでもこの姿は、相当革命的な描き方だと思いました。

ストーリー内部、特に人間関係は非常に緻密なプロットで
構成されていて、北野映画の中でも確実に一番
完成度の高い脚本だと思います。

ですから 映画の表面上はとてもエンターテイメントとして
楽しめました。

ただし・・・。
2点の理由からこの映画は、深みのある映画にはなり得ず、
単に2時間のエンタメになってしまっていると思います。

まず一点目
上に書いたとおり、非常に希薄な人間関係の中で
暴力が描かれているので、登場人物の行動に対して
感情移入が出来ないのです。

江戸時代からある「義理と人情」というのはベタですが
やはり、悲劇のトリガーとして理にかなっていると思います。
それを排除しているのは、スタイルとしてはアリですが、
やっぱり見ている印象が弱いですね・・・。

2点目は 既に多くの人が言っていますが
スプラッター表現ですよね。
なんだか、タランティーノにも似て
とても不快でした。まあこれは確信犯ですけど・・・。


というわけで、「ソナチネ」の神話的なテイストは
微塵も無い とても冷たい映画でした。


先に書きましたが、面白いのは面白いですよ。
要するに確信犯なんですよね。

タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」と
同じですよ。

武さんは単に面白いヤクザ映画を作ろうと思った
のでしょうから
DVDセールスは伸びると思いますよ。
by AWAchampion | 2010-06-23 23:05 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

少し前の話になりますが、宝塚歌劇団 花組公演の 「虞美人」を見に行きました。

これは かの巨匠 白井鐡造さん作の戦後すぐの大ヒット作「虞美人」を基にしつつ
現代風に木村信司さんが アレンジというか ほぼ改作した作品です。

内容は 古代中国 秦が倒れた後 エリート軍人の息子で 冷徹だがまっすぐすぎる男 項羽と
地方官僚の出で、いい加減だが なぜか魅力的な男 劉邦が、一度は認め合い
義兄弟の契りを交わしますが、 やがて最後の決戦に臨む・・・という故事に基づいています。

普通は演劇でも 今はどういう時代で、誰と誰がどう戦っている・・・。

みたいな事をある程度分かりやすく説明するのですが、
かなりいきなり ストーリーに入って行きます。

すこし人物関係が分からず戸惑いながら 見ていると、
そのうち 宝塚ですから スターと娘役スター  二番手と二番手娘役 などなど
どう転んでも この人とこの人がライバルだろう・・・という図式が浮かび上がって来ました。

さらに 誰が誰に恨みを持っていて、誰が誰を好きか・・・?
という非常にミニマムな人間関係を きちんと描いていたので、時代背景とか
地理的な雰囲気が分からなくても 1時間ぐらい過ぎた辺りから 加速度的に
物語に入ることが出来ました。

宝塚の演劇で 説明的な台詞がない・・・というのは
多分 小池さんたちの影響もあるんでしょう。 

その前の代の巨匠 柴田先生たちは やはり菊田一夫門下ですから
もう少し はじめから分かりやすい作りになっていましたが、
「とにかくキャラを作りこめば感動できるんだ!」という信念を感じましたし、
それは 3時間の長尺ドラマにおいてみると 非常に効果を発揮していました。

私はいままで 木村さんの作品は 数本しか見た事がないのですが、
今回は非常に楽しめました。

今の花組さんには 私は意外とご縁があって、2番手の壮一歩さんは、
私の実家 「のんのんバレエ教室」の出身です。

さらに数人 花組にお友達がいる関係でよく見ていますが 今回は特に良かったと思います。

ただ、今回の「虞美人」 来月の「スカーレット・ピンパネール」 その後の「エリザベート」など
宝塚は 小池修一郎 大作路線に
はっきりと舵を取ったのですね・・。

要はレビューが非常に少なくなってきました。
別に私が岡田敬二の息子だからというわけではありませんが、
レビューが宝塚の肝であることは間違いないと思うのですが・・・。

今回の「虞美人」のお尻にちょこんとくっついている ショーは
「う~~ん?どうかなぁ?」という出来でした。

やっぱり レビューはレビューとしてしっかりやったほうがいいと思うのですが・・。

岡田・草野・小原・三木・石田といった ベテランもそうですが
斎藤さんなどの若手がガツンと頑張って欲しいです。

また違いますからね レビューの作り方と ミュージカルの作り方は・・。

どう違うかは・・・「ロマンチック・レビュー」岡田敬二著 阪急コミュニケーションズ刊 を
ご一読下さい・・(笑)
by AWAchampion | 2010-06-12 10:16 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(1)

いやはや、今日は暑かったですね。
私はよりによって 今日は外回りをしなくてはいけない日で
ジャケット的なものを着ていた関係もあり、
いきなり 夏バテ。
「夏を先取り」です・・・。

皆様はいかがお過ごしでしょうか?


ところで、最近昔から見たかった珍しい映画を
2本見ました。

1)「世界残酷物語」

ご存知、モンド映画の決定版です。
1962年にイタリアの雑誌記者 ヤコペッティが世界の奇習を
面白おかしく、差別目線で撮影編集したドキュメンタリーですが
テーマソング「モア」は、今も愛される映画音楽の定番中の定番です。

それこそ「モア」なんて 何十回も聴いた事があったのですが、
実際「世界残酷物語」を目にする機会ってなかなかないですよね?

1976年にリバイバル上映をしたそうですが、さすがに家の親も
5歳のガキにこの映画を見せないでしょうからね・・。

内容は 【パプアニューギニアの女島での、男狩り】
【ニューギニアでの 5年に一度の 豚大虐殺祭り】
【ニューヨークの 犬の大規模墓地】
【台北の犬料理専門店】
【シンガポールの へび料理専門店】
【日本の 松坂牛の ビールを飲ませてマッサージする様子】
【ネパールの 牛のクビ狩り祭り】
【イタリアの キリストの受難になぞらえて血まみれになる祭り】
【アメリカの 婆さんたちの婚活 エアロビクス】
【日本の 東京温泉の トルコ風呂のようす(エロなし)】
【オーストラリアの ライフセーバー見習いの少女達の 初めての人工呼吸】
【ニューギニアの 石器人】
【イタリアの 人骨をアートにする村】


などなど
ヒドイものばかりです。

っていうか、
2割の本当に8割の大ウソという映画でした。

確かに映っている奇祭も残酷なものばかりでしたが、もっとも残酷
なのは、そういうヤラセを金儲けのためにバリバリやっている
ヤコペッティですよねぇ・・。

まあでも、今では絶対作れない部類の
「世界が本当に謎に満ちていた」頃の雰囲気が良く分かりました。

あ、そうそう あの現代アートの巨匠 イブ・クラインが
女性に青いペンキを塗って 人拓をとる様子が描かれていましたが
メチャクチャ「こいつキチガイです」みたいな編集をされていました。

実際イブ・クラインは この映画の試写を見て心臓発作を起し
死んでしまったそうですから、本当にヤコペッティは
クソみたいな悪い人間だったんでしょうねぇ・・。

でもそういう悪人にしか撮れない、奇妙ですが見るべき価値のある
映画ですよ。特にテレビマンは反面教師として。

2)「赤軍ーPFLP 世界革命宣言」

今度は、打って変わって 1971年に若松プロダクションが
製作した パレスチナに潜伏する日本赤軍の様子を撮影した
アングラ映画です。
当時、劇場公開はされず、各大学を廻って秘密上映されていた
映画ですが、それが今ではGEOで100円で借りられるんだから
日本は平和になったんですよね?

多分当時この映画を見るのは 命がけだったはずですよ。
だってバリバリ、日本赤軍のオルグ集会の様子が映っていて、
「よど号」直後で、岡本公三がテルアビブで乱射事件を起す直前の
マジで日本赤軍が世界一やばいテロ組織だった頃のプロパカンダ
映画ですからね。

映画は冒頭、ハイジャックの映像に、アラビア語のインターナショナル
が被るシーンから始まります。
そしてゴダールの映画のように 黒字に白い文字でいきなり

「革命とは武力闘争である」

と、ドカンと出て、
その後はデカン高原での、パレスチナゲリラの日常が淡々と描かれ
その映像に、延々と向こうのスターテロリストのインタビューがかぶります。

今となっては、プロレタリア革命や、世界同時革命などは
まったくリアリティを持たない言葉で、歴史の向こう側に消えてしまった概念ではありますが、つい40年前にはこういう事をまじめに
語っていたのだと思うと、感慨深いものがありました。

最後には日本赤軍最高指導者 重信房子が出てきて
インタビューを受けるんですよ!
インターポールに30年も追われていた、世界一のテロリストの
バリバリのころの映像をみるだけでも、この映画を見る価値はあります。

ただ、当時の革命家の皆さんの語り口調は、一応に暗く、
揚げ足を取られて総括されないためなのか、ワンセンテンスがだらだら
と長く、ナニを言いたいのか、21世紀のビジネスマンには伝わって
来ません。

その、物事を言い切らずに、相対化しながら喋る事、それ自体が
非常に「左翼」的ではあるんですけどね。
それじゃ伝わらないよ。と言う感じがしました。

この映画のヤバさは、この監督の足立正夫がその後日本赤軍の
一員とみなされ、イスラエル軍に20年も拘束されていたという
事実からも見て取れます。

返す返すも、日本は平和になったんですネェ・・・。
自宅のソファーで、ポテチ食べながら、この映画が娯楽として
消費されるわけですから・・・。
by AWAchampion | 2010-05-22 02:09 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

「NINE」見ました

今日、映画NINEを見ました。
例によってバリバリネタバレしますよ!

基本的にゴージャスで質も高く、才能がある人たちが集まって作った、
大人のエンターテイメントで、好みとしては「アバター」よりも断然スキです。
一言でいえば、本当によく出来ています。
ロブ・マーシャルはさすが、良い腕をしていると思いました。

が!

この映画は、フェリー二のスーパー名作「8_1/2」にインスパイアーされたミュージカル「NINE」が、
ベースとなっています。


私は岡田敬二の息子のくせに、
トミーチューンの出世作である、「NINE」を舞台で見ていないのですが、
もちろんフェリー二の映画は見てます。

たぶんそういう人が一番この映画に戸惑うのでは?と思いました。

察するにストレートプレイシーンからミュージカルに変わる雰囲気は
舞台の構成を強く引きずっているのでしょう。
そこは、とても練られていて、ミュージカルの高揚感を感じました。

ただ、編集が悪い意味で達者過ぎて、ライトチェンジ一つでファンタジーへ飛び込む、
ミュージカルのけれん味が削がれていたのも感じましたね。

問題はストレートプレイシーンにあります。
ここは正直フェリー二には勝てないですよ。
そもそも分かりやすくするために相当図式化した人物関係にしてありますから。
だったらバリバリ引用しちゃえばいいのに、あまりないなぁ、もったいないなぁと思いました。

逆に俳優・女優陣は頑張ってます。
歌も踊りも相当訓練されていて、007のM役の女優さんジュディ・デンチが特に良かったです。
あと、ペネロペ・クルスは凄いですね。
すげぇ色っぽいです。

ダニエル・デイ・ルイスはイタリア人には見えませんが、
ああいう女にだらしないロクデナシをやらせたらうまいですね。

でも、本妻とのシーンは、ばっさり要らないですよね?

というのは、絶対この映画を見た人は
「ALL THAT JAZZ」を思い浮かべると思うのです。
あれはボブ・フォッシーの自伝で、べつに「8 1/2」の
引用ではありませんが、創作に悩む監督とそれをとりまく
女性たちのミュージカル・・・というとねぇ・・。

もともとの「8 1/2」もそうですが、セックス&ドラッグ上等!
みたいな映画のほうが、この手の映画はいいような気がしますね・・。
by AWAchampion | 2010-05-02 00:07 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

今日、朝9時に銀座で、歌舞伎座最後の雄姿を撮影した後
10時半から晴れて休みに突入しました。

そこでふと東劇を見ると、なんと
「幸福の黄色いハンカチ」のリバイバル上映がやっているでは
ありませんか!

もちろん日本映画の名作ですし、見たことはあります。
でもその昔、子供のころにテレビで見ていたので
劇場で見たことはありませんでした。


~~~~~~~~~~~~
そういえば・・・。
この映画をテレビでやると
一緒に見ていた父が必ず、
「な!これいい映画だろ?」
「あのな、このあと武田鉄也がこけるぞ!ほら!コケタ!面白いだろ?」
と、興奮してか、ことごとく展開を先回りして解説するので
非常にうっとうしく、良い想い出がなかった事を、
今思い出しました・・。
~~~~~~~~~~~~~

良い機会ですし、ぜひシネスコで見たいと
11時からの回を見ました。

この映画を大スクリーンで見ると、意外と
ストーリーはあっさりとしていて、撮影&編集はざっくりして
いることに気がつきます。
いわゆる映像の錬度に関しては、結構荒い感じがしました。

それでもこの映画がすばらしい光を放っているわけは、
やはり役者のすばらしさにありますよね。
とにかくキャスティングがすばらしい


いやぁ、武田鉄也。さすが出世作で
田舎臭いです。
何をやっても「気をつけろ!この百姓!」って叫ぶ辺りも
田舎臭くてすばらしい。
でも変なハイテンション芝居ではなく、本当に田舎臭い
感じでリアルです。

それに輪をかけて桃井かおりのイモ臭さもすばらしい!
もともとロンドンでバレエ留学したお嬢様で
「青春の蹉跌」で鮮烈なヌードを披露したりした
直後で、本当は最高にイケてるはずの時期に、
まぁ~~~田舎臭い!

もともと山田洋次監督自身の作風が
田舎臭くて垢抜けない、松竹大船調ともちと違うものなのですが、
そのひとが「田舎臭く」演出したわけですから
それはそれは イモ臭くてすばらしいです。

そのカップルと対比する高倉健&倍賞千恵子夫妻は
凛としていて、それでいて不器用で
さすがです。

キャラクターを掘り出せば、荒くてもすばらしい映画になる!
という見本のような映画でした。

しかし散々荒いなどといいましたが
逆に黄色いハンカチが吊ってあったあたりからの演出は抑制が
効いていて、実は前半のロードムービー部分の荒さが
わざとであったことが良く分かります。

健さんと倍賞千恵子の再会を、ドンビキで
音声なしで見せるんだから素晴らしい。

ポランスキーも言っていますが、
「映画では一番見せたいものは
隠すものだ・・・。そうすると観客はそれをどうにかして見ようとして
自分達から映画の中に入ってくる」

まさに山田監督の術中にはまりましたね。
今の映画だと・・・特にテレビ局でディレクターを経験した
私のような演出家だと、そこを360度円形レールとか使って
超盛り上げようとしますが、それは実は逆なんですよねぇ。
by AWAchampion | 2010-04-29 19:10 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

「第9地区」 見ました

話題になっている映画
「第9地区」を見ました。


例によってネタバレするので、
これから見ようとしている人はにげてぇ・・・!














「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンがプロデュースして、南アフリカ出身のカナダ在住CM監督の若き俊英が監督した
この作品は、非常に独創的なアイデアから始まります。

【巨大な円盤がヨハネスブルグの上空に現れ、
中で栄養失調になっていた数百万のエイリアンが、人道的措置で
地上に住むことを許され、第9地区として難民キャンプが作られた。

それから20年後、その地区はスラム化して、
MNUという国際警備会社が、数百万のエイリアンたちをヨハネスブルグ郊外200キロにある、第10地区へ移住させようとするのだが・・・。】

という世界観それ自体が、本当に今までないタイプのSFでありながら、南アフリカの実情と絶妙にリンクしていて、着想がまず
すばらしいと思います。

映画はそれをすっぽりとフェイクドキュメンタリーでくるむことで
非日常を淡々と描き、逆に非常にリアルな世界として描写する事に
成功しています。

とくに第9地区とそれを囲むゲットーの雰囲気は
まさに今 ヨハネスブルグにある黒人ゲットーと同じ雰囲気で
ディティールまで非常にリアルです。

そこからストーリーは先が読めないまま
ドンドンと進んで行き、2時間フルスロットルのまま突き進みます。




ここからが感想ですが、
このスタート地点の映画のイメージから言うと、人種差別問題の
寓話的な話かな?と想像しますよね。

でも実際には非常にアクションSF娯楽大作でした。
最後には、モビルスーツと戦車の戦いみたいにまで発展します。

後から振り返って考えてみると、
「エイリアンに変身してしまう病に感染した主人公を
いきなり麻酔なしで、解剖したりしようとするかしら?」とか
「オチはそれ?残されたエイリアンたちは?」とか
「なぜナイジェリア人たちは、エイリアン側に立ったのか?」とか
いくつかのストーリー上の破綻はありますが、
それを吹っ飛ばすほどの迫力のある、メインストーリーの展開と
ジェットコースターSF描写で、
久々にドキドキしましたし、非常に楽しめました。

が、

人間がヒドイという描写を積み重ねているのですが、
なんかエイリアン側の描写はそれほど丁寧ではないので
人種差別寓話にまでいける題材なのに、
アクション娯楽作っぽくなっているのは、ちょっと
もったいないかな?という個人的な好みはありました。

エイリアンに愛が持てないんですよネェ・・。

まあ彼らが異形の者で気持ち悪いから、
話が成立しているところもあるので
なんとも言いがたいですが・・。

特にクリストファーの息子は地球生まれなわけで、
地球が母なる惑星なんだけど、ここで差別される哀しみとか
でも離れたくない・・・的なスパイスがあれば
もう一枚乗ったのに・・・と
惜しい気はしますねぇ・・。


でも、面白かったです。
最近見た映画ではダントツでした。

低予算映画かと思っていましたが、なんのなんの
スゲェ金かかってますね。
by AWAchampion | 2010-04-25 00:07 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)

いま公開中の『時をかける少女』を見ました!

普通に良い映画でしたよ。

ただ大林版やアニメ細田版は「とんでもなく心に残る映画」です。
その域ではなかったですね。

でも主演の仲里依沙と中尾明慶はかなりの好演です。

知世ちゃんは無理でも、尾美としのりは出してほしかったなあ。
あと芳山和子はショートへアであってほしかったなあ。
大林版はプロとなった今では色々とアラも見えますが、16才のボクは心を鷲掴みにされました。
今でもとんでもなく切なくて美しい名作だと思います。

尾道三部作の良さって理屈じゃないんですよねぇ。
大林さんは恐ろしい人です。

そうそう、「時かけ」は1994年のテレビ版
内田有紀と河相我聞版も捨てがたいんですよね。
毎回毎回名作を生みだす、鉄板ネタともいえますね。

しかしどのバージョンでも、基本形は 芳山和子なり、アニメ版では
和子の姪が、知らないうちにタイムリープの能力を偶然身に着けて
過去へ飛んでいく・・・と言う話になっています。

しかし今回は原作の深町一夫&芳山和子の物語がベースになりつつ、
芳山和子の娘 あかりが、母和子の伝言を届けに過去に
自発的にやってくる という今までとは大きな違いがあります。

そのため、正直 現在の和子がどの程度深町君の事を覚えているのか?
とか、彼女が開発したタイムリープのクスリはその後どうなったのか?
とか、そもそもタイムリープの薬を秘密に開発しているという事は
すご~~く、深町君の事を鮮明に日常生活で覚えているのでは?
とか色々突っ込めば突っ込めます。

しかしまあ、そういう事は別にいいんです。
「時かけ」で大切な 初恋の痛みの物語は今回もきちんと
継承されているからです。

あかりが飛ぶのは1974年 そこで仲間になり、やがて恋に落ちる
相手が8ミリ映画を作っている学生というところが、そもそも
大林的なるもので、僕などは嬉しくなっちゃいます。

彼が溜まっている大学の映画研究会の部屋なんて、
「あれ?谷口監督て、先輩なのかしら?」と思うぐらい
わが早稲田大学映画研究会の 旧第一学生会館の部室のそっくりでしたし、ZC1000やらZ800といった8ミリの名機が出てくるのも
グッと来まくりでした。

そしてなにより、回想シーンの中で和子が土曜日の放課後、あの
理科準備室でラベンダーの匂いをかいでしまうところは
大林版の完コピです。
すげぇ!と思わず劇場で叫んでしまったぐらい、ワクワクしました。


まあ、ただ、偶然飛ばされたわけではなく、しかも1974年の
風俗にどっぷり染まるわけで、なんか貧乏臭いのと、あまり
話に広がりが出ないという欠点は確かにあります。

が、主演の仲里依沙はとてもいいです。
彼女がガンガン動くことで本当に画面が生き生きします。
やはり「時かけ」は女優を輝かせる映画なんだナァと
しみじみ思いました。


色々と『名作』に手が届きそうで届かない、惜しい作品だとは
思いますが、いい映画であることは間違いないです。


しかし!

一つだけ8ミリ映画監督から苦言を言わせてください。
劇中でゴテツが使っている シングル8の名機  ZC1000は
1975年 2月に発売されています。

つまりこの作品の1974年2月には まだ発売されていないのです!
ここは『転校生』でも使われた Z800を使うべきでしたね。ざんねん!
by AWAchampion | 2010-03-26 19:30 | 映画・演劇など | Trackback | Comments(0)